研究課題/領域番号 |
15K16566
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
西村 方孝 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (80613398)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 慢性実験 / 自由行動下 / 人工感覚 |
研究実績の概要 |
本年度は、刺激に用いることができるような低インピーダンス(< 1 kΩ)の電極を、周波数選択的な感音性難聴動物(> 10 kHz; メス)の一次聴覚野高周波応答部位に設置し、本来であればオスが発する求愛音声の擬似的な感覚をそのメスに引き起こすことを目指して、電極の設置方法、電極・脳表面の長期的な(少なくとも2~3週間)保護方法、そして飼育方法の検討を行った。その結果、術後の直後を除けば、飼育期間中に顕著な体重減少や炎症も見られず、概ね1ヶ月程度であれば電極を保護するための金具を頭部に固定したまま飼育することが可能になった。また、電極が期待通りの部位に固定されているかを確認するため皮質上電位の計測を行ったところ、期待される周波数同調(高周波数の音刺激に対して強い応答)が見られた。当初計画していた通り、光イメージングの結果を踏まえて頭骨上に聴覚皮質各領野の構成をマッピングし、頭骨を大きく開けることなく一次聴覚野の対象部位に電極を固定することが実現できた。本年度に検討した方法が確立されたことによって、手術等による動物への負担が減り、より現実の求愛音声コミュニケーションに近い状態でオスが発する求愛音声の擬似的な感覚を人工的に難聴にしたメスに引き起こすことが可能になると考えられる。 擬似的な感覚を適切なタイミングで引き起こすためには、オスの求愛音声をリアルタイムに解析し、その解析結果を用いて短潜時で一次聴覚野等を刺激するための刺激パルスを発生させる必要がある。これを実現するため、短潜時で音声入出力が可能なオーディオデバイスを使って研究代表者がソフトウェアを独自に作成し、概ね5ミリ秒程度の実用的な潜時で、適切なタイミングでの刺激パルス発生が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2016年4月の熊本地震の影響で、本研究の遂行に必要な実験装置類の多くで修理または再作成が必要となった。加えて、それらの実験装置類の多くは、研究代表者が独自に作成した装置であり、購入すれば直ちに研究を再開できるような装置が少なく、予算的な措置が取られた後も復旧まで多くの時間を要した。結果として8~9ヶ月分、大幅に研究が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
今までの研究から、動物の求愛が成立する可能性は当初の見込みより低く、音声コミュニケーションがそもそも見られない(メスが求愛するオスを拒絶する)ケースも多く見られたことから、今後の研究では、より確実で再現性の高い実験が行える学習実験も研究に取り入れていく。発語は運動の一種であることから、発語のそれと近い百ミリ秒程度の運動タイミングの学習実験を行い、既に確立している自由行動下のモルモットの脳に電極を固定する方法を組み合わせて、運動のタイミングを制御する脳内部位に関する研究を推進させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年4月の熊本地震による研究の遅延で、平成29年1月に補助事業期間延長承認申請書を提出し、その延長が承認されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験動物等の物品費として使用する。
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