研究課題/領域番号 |
15K16567
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
細川 まゆ子 順天堂大学, 医学部, 助教 (70582013)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フッ素 / 記憶学習 / Y-maze / Barnes maze / 高架式十字迷路 |
研究実績の概要 |
高濃度のフッ素を含有した地下水を摂取しているアジアや中南米の地方では、骨フッ素症以外の健康被害として、児童のIQが低下した報告がある。動物実験ではフッ素摂取による記憶学習能力への影響について一様の見解が得られないが、一般に胎児期から発達期の化学物質曝露による神経系への影響は大きい。そこで本研究では、IQ低下が認められた濃度と同程度の飲料水をICRマウスの妊娠期から仔が6カ月齢に至るまで摂取させ、記憶学習能力への影響を行動試験を用いて検討した。妊娠14日目から離乳(21日齢)の間、5、25、50 ppm の濃度に設定したフッ素入り飲料水を摂取させた。対照群には水道水を摂取させた。離乳の翌日、雌雄に分け母マウスと同様の濃度のフッ素入り飲料水を仔マウスに6ヵ月齢に至るまで自由摂取させた。仔が6ヵ月齢を迎えた際、記憶学習能力を評価するY迷路、バーンズ迷路および高架式十字迷路を用いて評価した。 雄(各群10匹、50 ppmのみ9匹)のY迷路では25 ppm群の空間作業記憶が対照群に比べ有意に低下していた。バーンズ迷路では滞在時間が5、25、50 ppm群で対照群に比べ有意に低下していた。高架式十字迷路では25 ppm群のオープンアームへの侵入回数が対照群と5 ppm群に比べ有意に低下していた。雌(各群10匹、5 ppmのみ8匹)のY迷路では5、25、50 ppm群の空間作業記憶が対照群に比べ有意に低下していた。バーンズ迷路では滞在時間が25と50 ppm群で対照群に比べ有意に低下していた。高架式十字迷路では25 ppm群のオープンアームへの侵入回数が5 ppm群に比べ有意に低下していた。 Y迷路とバーンズ迷路の結果から雌雄共に対照群に比べ認知機能の低下が示唆された。また、高架式十字迷路では雌雄共に25 ppm群でオープンアームへの侵入が抑制され不安の増大が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脳の病理切片作製は終了しているが、平成28年度までに終了予定であった記憶学習能力の成績と形態学的変化の関連を検討するための評価ができていない。 また、胎児期から成熟期の低濃度フッ素による骨・歯への影響の評価ができていない。
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今後の研究の推進方策 |
脳の病理切片から海馬全体に対する面積比および海馬全体の容積を求め、記憶学習能力の成績と形態学的変化の関連を検討する。 摘出した大腿骨と歯を高分解能マイクロフォーカスX線CTスキャナー(マイクロCT)を用い、平均骨密度を測定する。また、マイクロCTによる3次元断層像を基にした海面骨の3次元微細構造解析を用いて、骨強度を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の英文校正に使用する予定であったが、実験が予定通り遂行できなかったため、予算の繰り越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
論文の英文校正に使用する予定である。
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