研究実績の概要 |
前年度までの実験により、元来の目標である、線条体の細胞からの記録・標識実験は、線条体の位置や細胞のサイズなどから、現状の技術では効率的に実験を行うことが難しいことが明らかになった。そのため、線条体に密な投射を送り、行動の発現と抑制に大きな役割を果たしていると考えられる、前頭前野における細胞の記録・標識実験を行い、これらの機能における、前頭前野と大脳基底核をむすぶネットワークの役割を明らかにすることを目指した。 頭部を固定した動物に適切な行動の発現と抑制を要求する課題を訓練し、その内側前頭前野においてマルチ―ニューロン活動記録実験を行った。その結果、前頭前野の背内側部において、行動の適切な発現に関わると考えられる細胞が多く見出された。本実験結果を基に、申請者が開発した単一ニューロン活動記録・標識法を用い、これらの細胞の位置やその投射先を同定した。その結果、このような細胞の多くが、第3層、および5層に分布しており、またそれらの多くが、線条体の、特に内側部に投射を送ることが明らかになった。 これらの実験により、行動の発現と抑制に関わる前頭前野-大脳基底核ネットワークの一端が明らかになった。これらの成果をまとめた論文を現在執筆中であり、30年度中に投稿予定である。 また、上述の実験と並行し、マルチニューロン活動記録実験を効率的に行うための記録電極の開発も行い、Neuroscience Research誌にて発表した(Tateyama*, Oyama*, et al., 2017;*共同筆頭著者)。
|