研究課題
本研究は、カントリー音楽が1960年代以降のアメリカにおいて、社会的保守派を代弁する政治的な音楽となるまでの歴史的経緯を明らかにすることを目的としている。フォークソンクが労働運動や公民権運動等への利用を通して左派の音楽として認識されるに至ったのとは対照的に、同様にアメリカ南東部の民謡や伝統音楽を基盤とするカントリー音楽が保守派の音楽であると認識されるにいたった要因と実態の解明を行うものである。カントリー音楽家の作品や言動、同時代の政治家や活動家の言動を比較検討して、トランスナショナルな視点も取り入れることにより、音楽に与えられた政治的な意味と役割とを明らかにした。最終年度にあたる当該年度は、これまでに収集した歴史資料の分析を進めるとともに、さらに米国でのアーカイブ調査を行い、戦後アメリカにおける保守派の政治家の活動や報道に関する資料を得ることができた。また、カントリー音楽家の活動と受容に関するアメリカ国内外の資料および文献の収集と分析を追加で行うことにより、アメリカにおけるカントリー音楽が保守政治との結びつきを強めた歴史的経緯について、第二次世界大戦前の南部における選挙戦での政治家と音楽家との協力関係や、戦後の全米規模での選挙戦におけるカントリー音楽と政治思想の呼応、音楽協会から政治家への歩み寄り、聴衆が政治的なグループとして認識される様相などを明らかにした。得られた研究成果については、米国アメリカ学会を含む複数の国際学会において研究発表を行った。
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すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
Proceedings of the 18th Hawaii International Conference on Arts and Humanities, Honolulu, Hawaii, USA
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