研究課題/領域番号 |
15K16580
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤井 千晶 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 招へい研究員 (80722058)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 東アフリカ沿岸部 / ザンジバル / タンザニア / イスラーム組織 / イスラーム復興 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、東アフリカ沿岸部における穏健派イスラーム組織の活動と、それを取り巻く民衆運動の展開について明らかにすることである。 本年度は、家庭の事情から、当初計画していた海外渡航ができなかったため、ウェブ媒体による新聞記事の分析と、文献研究に多くの時間を費やした。その結果、2010年頃に活発であったウアムショの活動は、やはり2015年夏の国政選挙時に政府によって徹底的に活動抑制を指導されて以降、ほとんど目立った活動が実施されていないことがわかった。 また、文献や新聞分析から明らかになった点は、ソマリアを中心に活動するイスラーム組織「アルシャバブ」による活動の活発化である。2017年10月にはアルシャバブによる犯行のなかでは最大規模となる700人以上の死傷者を出す爆発テロが引き起こされるなど、その被害は増大している。アルシャバブは世界的組織であるアルカイダ系であることや、その暴力的行為は、近年ケニアでも起こっていることなどから、今後はより広い東アフリカ地域にその影響が及ぶ可能性も高く、アルシャバブの活動も視野にいれて研究をする必要性がある。 今後の課題として明らかになった点は、2010年頃に活況をみせたウアムショが、実際に現在もほとんど活動していないのか、現地での聞き取り調査を通して明らかにすることである。また、穏健派であるウアムショを支持していた人々が、過激な活動を行うイスラーム組織について、どのように考えるかについても広く聞き取り調査を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は最終年度であったが、4月から5月は京都大学で開催した国際シンポジウムの幹事職で多忙を極め、6月以降は主に2歳の子どもの養育のために海外調査も実施することができず、研究活動に専念できる時間が限られたため、やむをえず事業期間を1年延長した。海外調査は感染症の危険性や、調査と育児の両立に不安があったことや、日本で育児を依頼することができる身内がおらず、民間・行政サービスを長期利用することも経済的な問題から不可能なため、断念せざるをえなかった。 文献調査とウェブ上の情報分析を中心に研究活動は継続的に実施してきたが、本年度はその成果を発表することができなかったため、進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はこれまでの遅れを取り戻すべく、積極的に研究発表や海外調査を実施する。5月26-27日の日本アフリカ学会学術大会(於:北海道大学)では、本年度の文献調査の結果を中心に発表する。 8月から9月には、ザンジバル(タンザニア連合共和国)において、2010年頃にウアムショの活動に従事していた人々を再訪し、現在の活動状況やウアムショに対する考え、過激派組織といわれるアルシャバブについての意見をインタビューする。また、一般の人々に対しても、ウアムショの活動や、アルシャバブによって引き起こされる近隣諸国でのテロについての聞き取り調査を行う。 10月から11月には海外調査の聞き取り調査の内容をまとめ、12月初旬に学術誌『日本中東学会年報』に投稿する。 12月から2月には、海外調査で明らかとなった現在のウアムショや、近隣諸国で活発に活動するアルシャバブについてまとめ、3月に本研究の総まとめとして、京都大学・上智大学共催の国際ワークショップで発表し、学術誌『イスラーム世界研究』にその内容を投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は家庭の事情により、海外渡航が困難となったために計画を変更し、研究期間も1年延長した。次年度は海外渡航も子ども帯同で実施する予定であり、下記の要領で研究費を支出する。 物品費については、東アフリカのイスラーム組織、民衆運動関係図書計48万円(60冊×8千円)を支出する。また、5月26-27日の日本アフリカ学会学術大会(於:北海道大学)の出張費として、計5万円を支出する。 タンザニアでの現地調査旅費(航空券、現地滞在費等)として、60万円を支出する。また、タンザニアでの調査コーディネーターおよび調査協力者への謝金として、計30万円を支出する。また、研究成果発表のための英文校閲費として、15万円を支出する。
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