研究課題
本研究の目的は、東アフリカ沿岸部における穏健派イスラーム組織の活動と、それを取り巻く民衆運動の展開について明らかにすることであった。最終年度の総括として、本年度は8月にザンジバル(タンザニア連合共和国)において調査を行った。その結果、2010年頃に活発であった穏健派イスラーム組織「ウアムショ(覚醒)」は、徐々に勢力を失い、目立った活動がほとんどみられなくなっていった。その主な原因は、2015年夏の国政選挙に向けて、ザンジバル州政府が徹底的にウアムショの活動を制限したためである。ウアムショの指導者たちによる公の場での演説活動が難しい状況となり、一般の人々が、ウアムショがかつて主張したイスラーム法に基づく「ザンジバル国」の建国について言及することも、ほとんどなくなっていった。本研究を通して明らかになった点は、ウアムショが州政府に弾圧されるなか、有力野党を支持し、党員としての活動を始めたことである。たしかに野党の主張には、ウアムショの理念と重なる部分があった。今後は野党の主張にも着目していきたい。また、ウアムショの活動は、5年に1度の国政選挙の度に興隆と衰退を繰り返してきた。喫緊では2020年の選挙が予定されているため、この際にどのような動きがあるのかを考察していきたい。さらに、今後も引き続き、ソマリアを主な拠点として活動するアルシャバブの動勢を注視し、ケニア共和国とタンザニア連合共和国への政治的・社会的影響について考察していく。また、現在、ウアムショの活動はザンジバルで行うことが難しいなか、インターネット上や海外を拠点として続けられることも考えられる。そのような他地域での活動状況やインターネット上の情報の分析も、継続して進めていく予定である。
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Kyoto Kenan Rifai Sufi Studies 3 (Islamic Studies and the Studies of Sufism in Academia: Rethinking Methodologies)
巻: 3 ページ: 279-290