研究課題
平成27年度には2000年代の天然資源開発に牽引されたアフリカ諸国の経済成長を統計などのデータを用いて再検討することを計画していた。これに基づき,産油国ナイジェリアの食料輸入依存の深刻化と国際原油価格の関係性について平成26年度末に紀要に発表した分析を補完し深めるべく統計データの収集,整理を進めた。また,2000年代のアフリカへの直接投資の大半を占めている中国からの対資源開発投資に関して情報の収集を進めた。これらの情報・データは現在も分析途中であり,平成28年度を通じて投稿・出版へつなげることを目指す。また,アフリカで近年新たに資源産出国となった国の経済状況の把握も計画していた。これについては,平成28年3月19日から27日にかけて,ガーナ国アクラ市および周辺において石油関連政府・民間団体や国営石油企業,国営製油所などを訪問し,視察,インタビューおよび情報の収集を行った。ガーナは2007年に原油が発見され,2011年より商業生産が始まっており,現地調査によって近年の経済成長の内容を検討する基礎となる非常に重要な情報や統計を入手することができた。なお,本研究は28年度に採取産業と製造業での投資の影響の際についても検討することを計画している。これに関連し,平成27年8月にはエチオピアにおける約3週間の現地滞在を通じ,アフリカの製造業の状況についての知見を深めることができた。エチオピアはアフリカの中でも天然資源依存ではなく,製造業への投資が増加しつつある数少ない国の一つである。この滞在は本科研代表者が分担者となって行っている他の研究調査が目的であったが,アフリカ製造業についての理解を深めることができ,本研究を進める上でも非常に有意義であった。
3: やや遅れている
平成27年度は,ナイジェリアの食糧輸入統計データの収集・整理,中国の対アフリカ採取産業投資についての情報収集,およびエチオピアにおける製造業についての状況把握や,産油国となったガーナの状況や石油収入管理枠組みの概要や現地経済状況の変化の把握といった,海外での調査はおおむね順調に進めることができた。しかし,分析はいまだ途上にあり,学内の研究会での報告などは行ったものの,論文執筆や学会での報告,投稿や出版にまではいたらなかった。この理由として,分担者として参加している研究プロジェクトに,想定していた以上の時間を費やしたこと,また本研究代表者の所属機関の異動により,特に年度後半には,計画していたとおりの時間を本研究に割くことができなかったことが挙げられる。しかし,本分析を進めるにあたり必要な情報は徐々に整理を進めており,平成28年度には遅れを取り戻すために集中的に分析を進める予定である。
平成28年度には,エチオピアの製造業,およびガーナの石油生産および精製などの関連産業にそれぞれ焦点を当てて分析を進める。アフリカ諸国における製造業への外国直接投資と採取産業への投資の比較は,本研究における主要な課題の一つであり,エチオピアとガーナを対比させて分析ができるか検討する。また,平成27年度後半より中国経済に陰りが見えており,本研究が当初計画していた2000年代以降のアフリカの成長を再検討する上で重要な区切りとなるタイミングであることが明確となった。中国経済の変化のアフリカへの影響についても視野にいれながら,今後の研究へつながる結果を出せるよう進めていく。
アフリカにおける現地調査のための費用を概算として請求しており,平成27年度末に調査へ向かう計画でいたが,研究代表者が3月1日付けで所属機関が異動となった(神戸大学より東京外国語大学へ)。そのため,ガーナ国での調査を予定よりも少し遅らせ,また短縮して3月中旬に行ったが,その際の費用は東京外国語大学において取得していた「平成27年度国立大学改革強化推進補助金(特定支援型)」(代表者:東京外国語大学 吉田ゆり子)より支出された。このため,海外調査分として予定していた本プロジェクトの費用が次年度へ繰越となった。
平成28年度のアフリカ現地調査,特にガーナ国内での陸地内での原油生産を行っている地方の視察と,統計収集などを充実させる予定である。
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T. Fukunishi Ed., Skill Development for Youth in Africa, Interim Report, Institute of Developing Economies.
巻: 2015-B-I-3 ページ: 27-116