研究課題/領域番号 |
15K16582
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
浅田 晴久 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (20713051)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アッサム州 / ヒンドゥー / ムスリム / ボド / ネパリ / 移民 / 土地利用 / 生業変容 |
研究実績の概要 |
2年目にあたる平成28年度は、インド・アッサム州において現地調査を4回実施し、国内ではデータの分析ならびに学会での発表を行った。12月には研究協力者であるニッタナンダ・デカ氏を招聘して打合せを行った。 本研究ではアッサム州で多数派を占める在来ヒンドゥー教徒(アホミヤ)の農家経営・生業の変容を明らかにすることを目標としているが、アッサム州にはアホミヤ以外にも社会・文化背景を異にする民族・コミュニティが暮らしているために、複数グループとの比較を通してアホミヤの特徴を捉えたいと考えた。そのためにアホミヤ、ボド(在来トライブ)、ネパリ(外来ヒンドゥー教徒)、ベンガリ(外来ムスリム)が居住する4つの村落を調査村に設定し、アンケート調査と聞き取り調査を進めた。初年度までにアホミヤとボドの調査村におけるアンケート調査は完了し、2年目にはネパリとベンガリの調査村についてもアンケート結果の回収・入力を完了した。4つのグループの社会経済状況を比較したところ、明確な差異が認められた。アホミヤは所有している土地面積が大きいが農業への関心は低く、教育を受けて都市部で正規雇用職に就く者が多い。ボドは正規雇用職に就く者もいるが、教育水準は高くなく農業や日雇いで暮らすものも多い。これら2つの在来グループは土地へのこだわりが強く、就職しても出身地から離れないものが多いという特徴がある。ネパリは土地面積に余裕があるが教育水準も高く州の内外へビジネスのために移動する割合が高い。ベンガリは最後にやってきたために土地面積が少なく教育水準も低いために州内ではなく州外への出稼ぎに出るものが多い。これら2つの外来グループは土地にこだわらずに現金収入を求めて積極的に外に出るネットワーク型と特徴づけられる。アッサム州の農業・農村の持続性をこだわり型グループとネットワーク型グループの相互作用の観点から解き明かす視座が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4つの調査村においてアンケート調査を完了し、複数のグループの社会経済状況の比較と相互作用の観点から研究課題を遂行する方向性を確立することができた。現地協力者、アシスタントの協力も引き続き得ることができており、研究期間内にアッサム州の農業・農村の持続性についてその構造的要因を解明することが可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査結果に基づいて、各村落において農家経営・生業の変容に関する聞き取り調査を続ける。特にアホミヤについては村内のカースト構成にも着目して、誰が・なぜ農業を行うか・行わないのか、誰が・なぜ村に住み続けるのか・出て行くのか、を詳細に明らかにする。また、複数の地形図・衛星画像を用いて土地利用変化を明らかにし、各年代のセンサスを比較することで人口動態も明らかにする。現地調査の結果と合わせて考察することで一定の理論を提示したい。
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