最終年にあたる平成29年度は、インド・アッサム州において現地調査を2回実施し、国内ではデータの分析ならびに学会での発表を行った。12月には所属大学で国際研究集会を企画し、成果を発表した。 本研究ではアッサム州で多数派を占める在来ヒンドゥー教徒(アホミヤ)の農家経営・生業の実態と近年の変容を明らかにすることを目標とするが、他の民族・コミュニティとの比較を通してアホミヤの特徴を捉えようとしている。前年度までに異なる民族が暮らす4つの村落でアンケート調査と聞き取り調査を実施し、調査村落のアホミヤ世帯の社会的特徴を明らかにしたため、今年度は他の民族との関係性から現在のアホミヤが置かれている状況を明らかにした。近隣の民族のうち外来ムスリム(ベンガリ)は最も遅い時代に移住してきたために土地所有面積が限られており、彼らの一部がアホミヤの村落に入り込んで賃金労働に従事していることが分かった。特にアホミヤの村落で最近進んでいる耕地から養殖池への土地利用転換において、ベンガリが重要な役割を果たしていることが聞き取り調査より分かった。また、在来トライブであるボドはベンガリと並んで教育水準が低く、農業生産性も低位にとどまっているが、彼らが自治県を設立したために、域中に住んでいた非ボドの住民の一部が域外に移住する動きが出ており、そのために現在アホミヤが暮らしている地域の土地の価格が高騰している。この影響でアホミヤ村落の中には耕地を売却する世帯も出ており、農業意欲の低下、農業離れが進む一因となっている。このように、民族間の関係性から近年のアホミヤの農業の変容を解き明かす視座が得られた。
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