本研究はインドのヒンドゥー・ムスリム間暴動に対して、警察と住民によるコミュニティ・ポリシング活動が犯罪および暴動の予防を達成した事例に着目してきた。 本研究の目的とは、活動事例について、聞き取り調査と参与観察を行い、かつ州間比較から活動モデルを導出し、他地域への適用可能性を考察することである。 研究の4年目にあたる2018年度は、総括年としてインド警察に関する最新の文献資料の収集と分析を行うとともに、ケーララ州ティルヴァナンタプラム市での現地調査を実施した。今回の現地調査では、ケーララ州警察の協力を得て、2008年に創設されたジャーナマイシュリ・スラクシャ計画によるコミュニティ・ポリシング活動についての聞き取り調査を行った。ジャーナマイシュリ・スラクシャ計画は創設10年を経てもケーララ州政府からの財政支援を受けて、巡回システムに基づき州内全域で活動を継続しており、予防の効果も持続してきたことを確認した。一方で、近年急速に広がりを見せているSNSを介した憎悪犯罪には、教育機関や行政と連携した対策が求められており、従来の警察主導によるコミュニティ・ポリシング活動に課題が生じていることも浮き彫りになった。 今後は、これまでに実施したマハーラーシュトラ州、タミル・ナードゥ州での調査から得られた知見を総合し、州間比較によってインドにおけるコミュニティ・ポリシング活動のモデル化を試行し、日本語および英語での研究成果報告を行う。
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