研究課題/領域番号 |
15K16589
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研究機関 | 大月短期大学 |
研究代表者 |
佐原 彩子 大月短期大学, 経済科, 助教 (70708528)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アメリカ研究 / 人道主義 / 難民 |
研究実績の概要 |
「合衆国難民政策の人道主義と新自由主義的世界秩序:インドシナ難民受け入れを事例に」と題した報告を、歴史学研究会総会「環境から問う帝国/帝国主義」(於慶應義塾大学三田キャンパス)にて、2015年5月24日に行った。この成果は、論文として歴史学研究会『歴史学研究』増刊号(2015年10月)に掲載された。また、報告「米越関係の狭間で紡がれる物語:VAOHPの取り組みから考察するベトナム系アメリカ人コミュニティ」を日本アメリカ学会年次大会、部会D「ベトナム戦争終結40年」(於国際基督教大学)にて、2015年6月7日にておこなった。2015年6月26日には、Yen Le Espiritu教授講演会 "War and Memory: Vietnamese Refugee Remembering and Remembrance"(於明治大学駿河台キャンパス)において司会を務めた。難民研究についての批判的視座を学ぶことができた。2015年7月11日には、アメリカ史学会第33回例会「冷戦期アメリカにおけるエスニック政治・運動と『対外関係』」(於亜細亜大学)にて司会を務め、冷戦外交とエスニックコミュニティの関係について最新の研究動向に触れることができた。8月29日より9月10日にはアメリカ、カリフォルニア州スタンフォード大学にあるHoover InstitutionにてChristopher Emmet Papers, Asia Foundation Papersなどについて史料調査を行った。2016年3月7日には琉球大学において「アメリカのベトナム撤退における難民救済作戦の政治性」と題した報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
8月末から9月にかけて行った史料調査によって、1940年代から50年代を中心とするアメリカにおけるアジアに対しての援助や人道支援の状況を研究することができた。Christopher Emmet PapersやAsia Foundation Papersなどについて史料を撮影してきたものを分析し、アメリカが南ベトナムへ介入していくことを決定していく過程についてさらに詳細に考察することができた。従来の研究では、カトリックリバイバルの影響やアメリカ帝国主義ということが強調されてきたが、南ベトナムへの支援団体や関係者についての調査でアメリカによる対アジア援助の文脈において、フィリピンや中華民国への援助などに深く関係していることが明らかになってきた。人道主義に関する研究について書籍を入手し、かつアメリカ研究の文脈で人道主義、介入主義、米越関係についての最新の研究動向について学んだこともあわせて、当時の国際政治の文脈を学ぶことで、対ベトナム介入を従来よりも広い視野で研究し、当時の人道主義の問題を明らかにする必要が見えてきた。とくに日本占領に関わった人々が南ベトナム介入にも関わっていたことそして今回フィリピンや台湾との関係も見えてきたことでアジアにおける冷戦リベラリズムのあり方が明らかになった。Hoover InstitutionではInternational Rescue Committee史料に個人的情報が多く含まれているため、研究倫理審査委員会(IRB)許可書なしには史料調査を受け付けていないため、勤務校でのIRB設置を希望し受理された。
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今後の研究の推進方策 |
6月までには学内に研究倫理審査委員会(IRB)を設置してもらい、7月中にはこの研究に倫理的問題がないことを証明してもらう予定である。夏には、その証明書を持参し、アメリカ、カリフォルニア州、スタンフォード大学にあるHoover InstituteでInternational Rescue Committeeの史料調査を行う予定である。この調査によって、南ベトナム政府樹立と日本、フィリピン政策との関連がさらに明らかになると考えている。このような調査に基づく成果を4月以降論文としてまとめ投稿したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予想していたよりも物品費として、史料あるいはパソコンを購入することがなかったため差額が生じた。次年度に繰り越し、史料として必要なものについて精査したうえで購入したい。
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次年度使用額の使用計画 |
史料として必要なものを購入することに使用したいと考えている。
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