研究課題/領域番号 |
15K16590
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
内藤 大輔 総合地球環境学研究所, 研究部, FS研究員 (30616016)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 市場メカニズム / 森林認証制度 / FSC / REDD+ / FPIC |
研究実績の概要 |
熱帯地域では依然として, 過剰な商業伐採に加えて、アブラヤシ園の拡大など急速な森林資源の劣化・減少が続いている。そのようななか市場メカニズムを利用した森林認証制度、REDD+(途上国での森林減少・劣化からの排出の削減)などの自然資源管理制度が、重要な役割を担うようになってきている。これまでの研究において、地域住民との新たな利害対立を引き起こす可能性が指摘されており、本研究では、東南アジア地域で両制度が導入されているボルネオ・カリマンタンに位置する認証林とREDD+パイロットサイトにおいて、これらの制度の社会的な影響、特に地域住民へのセーフガードの一貫として導入が進む「FPIC」や、「利益配分 (Benefit Sharing)」に注目し、評価することを目的としている。 本年度の調査はマレーシア・サバ州、インドネシア・カリマンタンで実施されている全FSC認証林、REDD+パイロットサイトに関する森林施業計画やプロジェクト・デザイン・ドキュメントなどを収集をおこなった。詳細なフィールドワークへむけて、インドネシア、中カリマンタン州におけるREDD+パイロットサイトである、リンバラヤ森林施業区で予備調査をおこなった。リンバラヤ森林施業区は2008年からREDD+に向けた活動行われており、2009年から第三者認証を取得し、泥炭地域に立地し、森林のアブラヤシへの転換などを食い止めるべく周辺企業や地域住民と協定を結び、森林管理を行っている。地域住民との関連では、FPICを実施し、協定を結んだ村に対して、村人の要望にあわせ、村落基金、医師の巡回プログラムの実施、苗木提供、植林、火災予防訓練などの取り組みを実施し、森林減少の予防に努めており、先進的な取り組みが行われていた。またFSCの先住民常設委員会、委員をつとめるマレーシアの専門家を招聘し、聞き取り調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、マレーシア、インドネシアでのFSC認証林の森林管理計画や認証資料の収集、REDD+のプロジェクト・デザイン・ドキュメント(Project Design Document: PDD)などの収集が順調に進むとともに、REDD+の重要なフィールドサイトであるインドネシア、中カリマンタンのリンバラヤ森林施業区において、予備調査をおこなうことができた。昨年は大規模な泥炭火災が起きていたので、調査が実際に行えるか、調査地に入れるかが分からなかった時期もあったが、雨期に入り、火災も鎮火したため、予定通りフィールドに入ることができた。泥炭火災の影響は大きく、地域住民の生業にも大きな影響を与えていたため、その点についても合わせて調査をおこなっていきたいと考えている。研究成果の発表の場の一つとして、6月には「International Workshop: Evaluating Market-Driven Natural Resource Management in the Tropics」と題した国際ワークショップを共催し、世界各地で森林認証制度やREDD+に関わる国内外の専門家を招聘し、議論を行った。またマレーシアよりFSC先住民族常設委員会、委員を務めるニコラス・ムジャ氏を招聘し、FSCの新基準におけるFPICや利益配分に関する扱いについて聞き取り調査を行えたことは非常に有益であった。一方、インドネシアのFSC認証林の認証審査へ同行する予定であったが、来年度に延期となったため、調査の変更となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、マレーシアでの調査許可の更新をおこない、フィールドワークを継続するための手続きを行っていく。更新手続きが終わるまでマレーシア、サバ州におけるFSC認証林の基礎情報の収集を続けていきたい。サバ州で活動する先住民族NGOへのFPICプロセスについての聞き取り調査を行う予定である。また来年度はFSCの先住民常設委員会の会議が、本年度招聘したニコラス・ムジャ氏を中心にマレーシアで開催されることになっており、FSC認証林における先住民族コミュニティへのFPICや利益分配についての議論が行われるため、オブザーバー参加を予定している。インドネシアでの調査は、引き続き中カリマンタンを中心としたREDD+サイトでのフィールドワークを継続することともに、FSC認証林も訪問し、比較調査を続けていく。また認証審査のトレーニングや実際の審査に同行できるよう手続きを進めている。森林認証制度とREDD+を比較していく上での分析方法について来年度以降検討していきたい。国際林業研究センターがREDD+のグローバル比較研究を行っているため、これらの分析手法を参考にしていきたいと考えている。インドネシアの調査許可の更新も行う。研究成果の発表の場として、10月に予定されているIUFRO会議などの国際会議に申請中である。本年開催した市場メカニズムに関する自然資源管理に関する編集本を出版する方向で進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた森林認証審査に関する調査が延期となったため、変更が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、認証審査の調査に使う予定であるが、変更がありうるものとして、柔軟な計画を立てて、経費の執行に繋げたい。
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