研究課題
本研究は、戦時性暴力をめぐる認識・運動・国連政策の相互のダイナミズムに着目して戦時性暴力に対するグローバル・ガバナンスの形成過程を分析することを目的とするものである。具体的には次の三つの研究を行った。(1)第二次世界大戦終結以降の国際法・国連の決議等における戦時性暴力に対する認識の歴史的変遷を明らかにする。(2)戦時性暴力に取り組む国境を越えた女性運動の取り組みの実態を明らかにする。(3)戦時性暴力に対する国連政策の策定過程を明らかにする。最終年度である平成30年度は、(3)に取り組んだ。安保理決議1325号にみるように国際社会において今日、戦時性暴力が国際安全保障上の問題として認識されていることは、人々の暮らしの安寧に着目し安全保障概念の再定義を図った画期的な概念である「人間の安全保障」の考え方と軸を一にしている。そこで国連開発計画(UNDP)による『人間開発報告1994―人間の安全保障の新次元』の刊行を契機に広まった「人間の安全保障」が、安保理を中心に進められてきた戦時性暴力の規制とどのような関係性にあるかを分析した。そして研究期間全体を通じて、「慰安婦」問題や旧ユーゴスラヴィアにおける女性への大規模な組織的レイプに端を発する、戦時性暴力根絶のためのトランスナショナルなフェミニズム運動が国際刑事裁判所ローマ規程、そして安保理決議1325号へと結実していく過程を明らかにした。また研究成果のアウトリーチ活動も積極的に行った。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
『学術の動向』2019 年6 月号特集1「「人間の安全保障」とジェンダー再考」(掲載予定)
巻: 『学術の動向』2019 年6 月号 ページ: -