研究課題/領域番号 |
15K16597
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
永瀬 節治 和歌山大学, 観光学部, 准教授 (10593452)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 世界文化遺産 / 歴史的環境保全 / 生活・生業 / 住民組織 / 空間管理 / 協働 |
研究実績の概要 |
今年度は、合掌造り集落を主体とする世界遺産の緩衝地帯として位置づけられている南砺市五箇山地域の地域資源の現状、及びそれらの観光活用(観光資源化)の実態や潜在力を把握するための調査を行った。前年度に実施した五箇山地域の全集落を対象とした景観資源調査の結果については、「眺望景観」の観点から類型化を行い、それらの観光活用の可能性についても検討を行った。また、かつて合掌造り集落の冬の副業として営まれ、現在も生産が受け継がれている五箇山和紙について、製紙に加えて紙漉き体験等の観光客受け入れも行っている2事業者を対象に、和紙生産の現状や観光客受け入れの現状に関するヒアリングを行うとともに、観光客へのアンケート調査を通じて生業の体験や五箇山観光に関する認識やニーズ等の把握を行った。 また、当初計画では予定していなかった対象地域として、漁業集落として独自の歴史的環境と生活文化が受け継がれ、2017年に日本遺産にも認定された和歌山市雑賀崎地域において、地域組織や民間事業者との協働により、地域資源の把握とそれらの知見に基づく観光モニターツアーの実施を行い、その効果と課題を検討した。 これらの成果のうち、五箇山地域の眺望景観の分析に関しては、2017年度の日本建築学会大会の学術講演会で発表を行った。また五箇山地域の和紙生産と和歌山市雑賀崎地域における取り組みについては、2018年度の日本建築学会大会の学術講演会において発表を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
進捗が遅れている理由として、第一に、研究代表者が2017年度から担当することになった和歌山大学COC+プログラム(わかやま未来学副専攻)に関する業務が多忙となったため、本研究の現地調査や資料収集等に費やす時間が削減された。第二に、本研究の主要な対象地域である南砺市五箇山地域において、研究の一環として実施予定であった、地域の関連主体との連携による社会実験等の実践型調査を行うための社会的条件(地域の関係者とのスケジュールや体制等の調整など)が十分に整わなかったため、当初予定した期間内に実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、研究対象地の見直しを行う。主対象地である南砺市五箇山地域、および一体的な世界遺産エリアとして隣接する白川村に関する調査は継続しつつ、比較対象地域に関しては、世界文化遺産の登録地域以外にも「生活・生業系文化遺産」を活用した観光マネジメントの検討が可能な地域は存在するため、それらを視野に入れながら、本研究の視座に基づく有用な知見を提示できるよう、観光マネジメントの実例に関する俯瞰的な調査を進める。 第二に、昨年度に実施を断念した、五箇山地域における実践型調査(社会実験)を実施するため、地域の関係主体との調整を進め、現実的な実施体制を整える。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成29年度においては、五箇山地域における実践型調査(社会実験)を実施することができなかったため、旅費および必要物品についても当初計画よりも支出が抑えられた。 (使用計画)平成30年度は、物品費については文献・資料等の購入費および資料整理費用として40千円、和歌山市を起点とする調査旅費として、五箇山および白川郷(2泊3日×5人×2回)440千円、その他比較対象地である石見銀山(2泊3日×2人×1回)120千円の計560千円、調査及び資料整理等を補助する学生への謝金(5人×7日)として175千円、論文投稿費として50千円、その他複写費として13千円をそれぞれを計上し、前年度からの繰越額計838千円を使用する。
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