研究課題/領域番号 |
15K16600
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研究機関 | 神戸山手大学 |
研究代表者 |
原 一樹 神戸山手大学, 現代社会学部, 准教授 (90454785)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アクターネットワーク理論 / 観光倫理 / 哲学的実務家 / TEFI / マキァーネル / アーリ / 観光のまなざし / ドゥルーズ=ガタリ哲学 |
研究実績の概要 |
本研究は3年間の研究期間内に、「観光学原論への哲学の導入」・「観光学原論への倫理学の導入」・「観光教育への哲学・倫理学の導入」を試みるものである。 「観光学原論への哲学の導入」に関しては、ドゥルーズ=ガタリ哲学とフーコー哲学の導入を試みた。一つ目の研究成果は、ドゥルーズ=ガタリ哲学にも大きな影響を受けている「アクターネットワーク理論」を観光研究に応用した先行研究に関する文献調査と、別途進めている高野山観光研究の成果とを結び付け、「アクターネットワーク理論」の観光研究への応用に伴う課題を明瞭化した口頭発表である。二つ目の成果は、観光社会学者マキァーネルの『観光倫理』の言説の概念的特徴を分析し、ドゥルーズ=ガタリ哲学との接続地点を見出した点である。三つ目の成果は、マキァーネルのフーコー哲学への両義的立場が解明され、「眼差し論」の理解が深化した点である。(後者2つの成果については現在、論文を投稿中である。) 「観光学原論への倫理学の導入」に関しては、英語圏における先行研究に関する文献調査を実施し、「観光倫理学」を巡る大よその問題圏を把握することができた。2016年4月現在、観光倫理学の問題圏を俯瞰的に捉える展望論文を執筆中で、夏には投稿予定である。 「観光教育への哲学・倫理学の導入」に関しては、英語圏での新しい「価値教育」の取り組みと、著名な観光学者トライブの「哲学的実務家」の教育プログラムに関する文献調査を行い、両者を踏まえつつ、概念的・経験的に今後日本の文脈で探究を進めるべき課題を明瞭化した。日本観光ホスピタリティ教育学会にて成果発表し、論文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3年間の研究期間内に、「観光学原論への哲学の導入」・「観光学原論への倫理学の導入」・「観光教育への哲学・倫理学の導入」を試みるものである。 「観光学原論への哲学の導入」に関しては、平成27年度計画のうち、「アクターネットワーク理論を活用した観光研究の調査と具体的な観光の現場・事例に関する分析」、「眼差し」論の回顧と可能性の模索という課題がほぼ達成されたと言える。口頭発表に加え、現在論文を投稿中である。 「観光学原論への倫理学の導入」に関しては、平成27年度計画の予定通り、英語圏における先行研究に関する文献調査を実施してきた結果、かなり守備範囲が広いと見受けられる「観光倫理」の問題系の整理が着実に進んできている。現在、成果の論文を執筆中である。 「観光教育への哲学・倫理学の導入」に関しては、平成27年度計画の予定通り、基礎的文献調査を実施した結果、特に「価値教育」を進めるTEFIの理念・概念的枠組みや取組みに関する理解、著名な観光学者トライブの提唱する「哲学的実務家」の枠組みに関する理解を深め、成果を発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
「観光学原論への哲学の導入」に関しては、研究計画と27年度成果を踏まえ、以下の2つの方向で研究を進める。一つは、理論と観光現象との接合を図ることである。具体的には、アクターネットワーク理論の観光研究への応用における課題の明瞭化を踏まえ、別途進めている高野山観光研究の具体的現場と接続し、アクターネットワーク理論に基づく観光現象調査を具体的に進めること、及び、マキァーネルの言説の分析から浮上した、ドゥルーズ=ガタリ哲学の諸概念(平滑空間と条里空間、生成変化、情動)の観光現象分析への活用を具体的に試みることである。もう一つは、観光者の観光経験の理解の深化を目指し、現象学・解釈学の活用を試みることである。具体的には別途進めている、高野山を訪れる観光者の物語経験の分析に際し、現象学や解釈学の知見がいかに活用されうるか、英語圏の先行研究をレビューしつつ、研究を進める。 「観光学原論への倫理学の導入」に関しては、まずは広い領域に亘る観光倫理の問題系を展望する論文を完成させ成果を発表する。その上で、日本の文脈で切実な課題と思われる観光倫理学上の問題に関し、具体的事象を取り上げ分析する作業に進みたい。また同時に、「観光と幸福」や「観光と平和」という問題系も、研究計画には詳細を記載していないが探究に値する主題だと思われるので、関連文献の渉猟・読解から研究を開始する。 「観光教育への哲学・倫理学の導入」に関しては、2つの研究作業を進める。一つは27年度成果を踏まえ、TEFIの「価値教育」やトライブの「哲学的実務家」プログラムの未達成点と思しき、観光倫理に関するカリキュラムデザインの細部を具体的に検討する作業である。もう一つは、元々の研究計画に従い、観光倫理学教育の洗練に繋げる為、大学における哲学・倫理学教育の具体的手法に関する文献調査(英語・フランス語・日本語)を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会出張旅費が計画よりもかからなかった為、書籍購入に充当したが、当該年度中に必要な書籍を大よそ購入できた為、少額の使用額を次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
少額の次年度使用額を、28年度の物品費への補充金として使用する予定である。
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