研究課題/領域番号 |
15K16600
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研究機関 | 神戸山手大学 |
研究代表者 |
原 一樹 神戸山手大学, 現代社会学部, 准教授 (90454785)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 観光と哲学 / 観光と倫理学 / 観光と文化 / 観光とアイデンティティ / 倫理的コード / 倫理的意思決定理論 |
研究実績の概要 |
本研究は3年間の研究期間内に、「観光学原論への哲学の導入」・「観光学原論への倫理学の導入」・「観光教育への哲学・倫理学の導入」を試みるものである。 「観光学原論への哲学の導入」に関しては、日本人哲学者・松永澄夫が構築を進めている哲学と、観光研究との接点を探る論稿を完成させた(共著書として近刊の予定)。松永哲学は、人間が関わるあらゆる事柄について丹念に事柄の成り立ちを描き出そうとする「地図の哲学」である故、主題的・明示的に「観光」が対象として論究されているわけではないものの、従来の観光研究の枠組みと突き合わせることで、観光を大局的見地からいかに理解するかや、観光の諸側面(プレ・ツアー、オン・ツアー、ポスト・ツアー)に関して哲学的に問題とすべき事柄、「観光の哲学」を構築する為に必要な作業など、重要な認識を獲得することができた。 「観光学原論への倫理学の導入」に関しては、英語圏の先行研究に関する文献調査を実施し、「観光倫理学」を巡る大よその問題圏を把握した結果を、「観光倫理学の展開に向けた準備的考察―英語圏先行研究からの課題整理―」として学会発表にまとめた。今後必要となる作業課題の属する諸領域として、「観光の本質や在り方に関する継続的反省」・「観光を取り巻くイデオロギーや制度批判」・「倫理的コードに関する調査と分析」・「倫理的意思決定理論の導入」・「各種観光形態や観光産業の倫理的問題の調査」・「観光倫理教育の構築」が抽出された。 「観光教育への哲学・倫理学の導入」については、上記の哲学及び倫理学方面の研究を通して、観光倫理教育の具体的カリキュラム化の為に必要となる、大きな問題群の見取り図と、具体的な問題設定に関する認識を深化させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3年間の研究期間内に、「観光学原論への哲学の導入」・「観光学原論への倫理学の導入」・「観光教育への哲学・倫理学の導入」を試みるものである。 「観光学原論への哲学の導入」に関しては、今年度、現代の日本で独自の哲学を構築しつつある松永澄夫の哲学と観光研究の先行理論や認識とを突き合わせることで、観光学と哲学との接点を洗い出すことができた。これは当初計画に代えて遂行された研究であったが、結果として、西洋の現象学や解釈学の観光研究への導入という課題に関しても、準備的に意義の深い研究結果をもたらした。 「観光学原論への倫理学の導入」に関しては、当初計画通り、英語圏における先行研究に関する文献調査を踏まえ、「観光倫理学」の大きな枠組みを描き出すことができた。 「観光教育への哲学・倫理学の導入」に関しても、観光倫理教育の具体的カリキュラム化への基礎的足場を作ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
「観光学原論への哲学の導入」に関して平成29年度は、一つ目の課題として、アクターネットワーク理論及びドゥルーズ=ガタリ哲学の観光研究への応用に関する成果を取りまとめる。二つ目の課題として、「物語ること」を中心に、観光者の観光経験のあり方に関する哲学的考察を深化させる。 「観光学原論への倫理学の導入」に関して平成29年度は、一つ目の課題として、具体的に日本の文脈における観光関連事業者の「倫理的コード」の在り方に関する調査を進め成果を取りまとめる。二つ目の課題として、日本の文脈における各種観光形態や観光産業に関わる倫理的諸問題の調査を進める。 「観光教育への哲学・倫理学の導入」に関して平成29年度は、一つ目の課題として、「観光倫理学」の科目内容構成に関する検討を進め成果を取りまとめる。二つ目の課題として、観光に関する哲学的反省を促す教育実践の在り方を英語圏の先行理論や哲学・倫理学教育手法を参照しつつ探究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費及び旅費について、所属機関からの研究費も獲得していた為、予定よりも少額の支出となった。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費については、観光学関連の最新の洋書を購入する必要があるので満額の執行となるはずである。旅費については遠方での学会への参加を検討しているので、こちらも満額の執行となる予定である。
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