本研究は3年間の研究期間内に、「観光学原論への哲学の導入」・「観光学原論への倫理学の導入」・「観光教育への哲学・倫理学の導入」を試みるものである。 「観光学原論への哲学の導入」に関しては、日本人哲学者・松永澄夫が構築を進めている哲学と、観光研究との接点を探る論稿「松永哲学と観光研究との接点を洗い出す―<観光の哲学>に向けた準備的考察」を完成させ、この論考が松永澄夫門下の研究者の共著である『哲学すること―松永澄夫への異議と答弁』(2017年11月刊行)に収録された。この研究により特に「観光と文化」や「観光とアイデンティティ」という主題に関する認識を深化させた。 「観光学原論への倫理学の導入」に関しては、D.マキァーネルが2011年に上梓した“The Ethics of Sightseeing”を、哲学・社会学・都市論等の諸言説を用いつつ批判的に分析した論考「D. マキァーネル著『観光倫理』に関する批判的分析 ―ツーリストサイトと観光者の考察からドゥルーズ=ガタリ哲学へ―」を完成させ、この論考が大学紀要(『研究論叢90号』2018年1月発行)に収録された。この論考により、マキァーネルの「創造的観光者」に関する言説の哲学的特徴と今後の展開可能性が解明された。 「観光教育への哲学・倫理学の導入」については、上記の哲学及び倫理学方面の研究に加え、国際連合が掲げる「持続可能な開発目標」と観光高等教育との接続性について、概念的次元での検討や、実際の教育実践への活用に関する検討を進めた。
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