研究課題/領域番号 |
15K16605
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
佐藤 慶太 香川大学, 大学教育基盤センター, 准教授 (40571427)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ランベルト / テーテンス / カント / ヴォルフ / 超越的/超越論的 / 形而上学 / 単純概念 / 現象学 |
研究実績の概要 |
平成27年の活動は、(1)読解作業、(2)研究発表の二つに区分されうる。
(1)本年度は、まず、テーテンスの『人間本性とその展開についての哲学的試論』を2014年刊行のコメンタリー版に依拠して読解し、当時のドイツにおける諸立場の整理をおこなった。その過程で、当初は最終年度に取り扱う予定であったランベルトの『新機関』の読解を、先に行うこととした。これはランベルトの立場を先に明らかにすることが、当時のドイツの状況を見通すためにより有益であるという判断に基づく。『新機関』には「現象学」と名づけられたパートがある。ここでランベルト、人間知性にそなわる不可謬な単純概念と感覚によって受け取られたもの(「仮象(Schein)」)との関係を考察している。つまり「現象学」において、ランベルトはテーテンスが「心の能動性と受容性」という概念のもとで定式化した問題を、別の切り口から論じているといえる。『新機関』の読解を通じて、本研究の枠組みである「心の能動性と受容性」の射程をより広くとることができるようになった。また、考察を通じて、カント、テーテンス、ランベルトにおける共通の方向性(基礎概念の確立を通じて形而上学を新たに捉えなおすこと)が、具体的に把握できたことも収穫であった。
(2)研究の成果は、論文「カントとテーテンス-超越的/超越論的をめぐって」(『哲学』No.66所収)、および研究発表「テーテンスの観察哲学と『純粋理性批判』第一版演繹論」(カント研究会289回例会)において公表した。特に後者では、専門領域の近い国内のカント研究者との議論を通じて、考察を深める手がかりを多く得た。またこのほかに、新人文主義の教養概念に焦点を絞った論文(「新人文主義における「教養」と教養教育の現在」、武重雅文編『若者・政治・大学教育』、香川大学教育学部発行、所収)を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の順序を入れ替えることになったが、資料の収集、文献の読解は順次進んでいる。前者については、ランベルト著作集、ロッシウスの著作、テーテンスの形而上学講義録等、研究を進める上で重要な文献の収集を行うことができた。後者については、ランベルトの『新機関』の読解を行い、研究実績の概要において示したように、一定の成果を得ている。研究成果の公表については、平成26年度までの研究の成果が主であったが、2つの論文と1回の研究発表を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、当初、最終年度に取り扱う予定であったランベルトの著作を読解し、そのヴォルフ批判の文脈に照らして、ヴォルフの研究にも部分的に踏み込んだ。これは、ランベルトがテーテンスとはまた別の仕方で当時の「心の能動性と受容性」の論争を概観し、自らの立場を打ち出していることが分かったためである。ランベルトをまず研究することにより、よりクリアーに当時のドイツ哲学の状況を見通すことができるようになった。以上の成果を最大限活かすことにより、来年度以降の研究をより推進させることができると思われる。 また、2016年度は、東京で開催されるカント研究会(年10回程度開催)へのICTによる遠隔地からの参加が可能になる予定である。これを利用して、実際に現地にいけない場合でも、研究会に参加し、関連する研究についての知見を広げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
1000円以下の額が残ったが、繰越をする方が有益に使用できると判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度予算とあわせれば有効に使用できるので、そのようにする。
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