昨年度に引き続き、申請時の研究計画に則り、終末期医療の倫理に関わる研究を遂行した。まず、死にたいという患者の自己決定が尊重されることの良さを特別に重視する立場から、安楽死、尊厳死、自殺ほう助等のふるまいの合法化を擁護するタイプの理論的主張について、批判的に検討する単著論文を執筆し、これは『社会と倫理』(南山大学社会倫理研究所編)に掲載された。5月には、シンガポールで開催された生命倫理分野の国際会議である13th International Conference on Clinical Ethics Consultationにkey note speakerとして招待を受けて参加し、"Ethical and Legal Debates in End-of-Life Care in Japan"と題する講演を行った。また、米国NIHの生命倫理部門の研究者らと共同で、人の死の定義に関する各国・地域の法規定を比較する研究を行い、その成果を査読付きの国際誌であるJournal of Clinical Ethicsに発表した。 また、終末期医療の倫理に関してこれまでに発表してきた論文や研究成果をまとめ、単著として刊行するための準備を行った。原稿を完成させ、10月には学術振興会成果公開促進費(学術図書)の申請を行い、平成30年度に採択された。 この他、医学研究における利益相反管理に関する論文(共著)1本を出版し、「尊厳」の概念を主題とする書籍についての書評論文を執筆した(近刊)。また、自殺幇助の倫理に関して生命倫理学会のワークショップで発表した。
|