研究課題/領域番号 |
15K16608
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石田 京子 慶應義塾大学, 文学部, 助教 (80736900)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カント / 共和制 / 法哲学 |
研究実績の概要 |
27年度はカントにおける共和制概念の歴史的文脈を探究するための前提として、(1)法と強制との関係についての研究と、(2)カントの共和制とその実現についての研究を行った。(1)の研究として、カント哲学において強制が、通常言われているような、義務遂行のための心理的・物理的な手段として考察されているのではなく、他の人に対してその人の合意がない場合ですら意志を規定をするための権能としてとらえられていることを明らかにした。また、法と強制権能とのつながりから、権利概念がどのように導出されているかを検討した。(2)の研究では、カントの共和制に関係する諸概念の整理を行った。まず、私法と公法、そして自然状態と市民状態との相違を考察し、それらの相違と共和制概念とが、どのような連関におかれているかを検討した。自然状態と市民状態は、社会契約論において広く使用されている概念だが、カントは両者を自らの哲学に即して理解しており、共和制と専制という二つの対立する国家体制の形態が、その理解を反映したものであることを示した。それに続き、共和制自体はアプリオリな理念であるが、カントのテキストのなかには、共和制が達成されるべき理念――法――と、それを実現するための制度の運用――政治――の両面からの記述が存在することを、明らかにした。 以上に関する研究成果を、9月に行われた第9回日独倫理学コロキウム(ボン)と、12月に行われた第2回大阪哲学ゼミナール(大阪大学)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4月にフランクフルト大学のマークス・ヴィラシェク教授と面会し、カントの強制概念に関する理解に不十分な点があることを指摘された。国家制度に関する概念整理を試みる本研究にとって、強制概念は研究の中核となる基礎的な概念であるため、本年前半はまずその修正に取り組んだ。その結果、共和制概念の研究そのものを始める時期がずれ込み、ルソーの代表制に関する検討を十分に行うことができなかった。しかし、カントの共和制に関連する諸概念を検討し、カントと他の哲学者だちとを比較検討するための基盤は十分に整ったと考えられるため、上記の判断とした。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はルソーの代表制概念の検討を行い、カントにおける共和制および代表制概念との比較を行う予定である。「共和制は立法権と執行権が分離した体制である」というカントのテーゼは、立法を行う議会と、法律に基づいて統治活動を行う君主ないし内閣との役割分担の徹底化を主張したものとしばしば考えられてきた。本研究は、このテーゼをカントがルソーから受容したという想定のうえで、立法権も執行権も、またそれらの「分離」も、通常の理解とは異なっていることを示す予定である。また、20世紀以降のドイツの憲法論を参照することによって、カントとルソーにおける代表制について、歴史的文脈にも即した知見が得られると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
科研費にて購入予定だった雑誌が、過去の分も含め、所属大学図書館で購入されたため、使用額が予定より少なくなり、20万円ほどの差が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度はルソーとカントの代表制概念の比較を行うため、カントおよびルソー研究に関連する書籍、および法律や憲法論についての研究書の購入にあてる。
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