本研究は平成25年度~平成26年度科学研究費若手研究(B)「ライプニッツの公共の福祉論」(課題番号:25770012)による成果を踏まえ、G・W・ライプニッツ(1646-1716)の政治論に関する知見をさらに発展させることを意図するものである。 本研究は平成28年度の研究計画として以下の2点を設定していた。1.『ドイツ諸侯の主権と使節権』をメインテクストとして読解し、ライプニッツの神聖ローマ帝国論の固有性を明らかにする。2.サン・ピエールの『永久平和論』およびこれに対するライプニッツの「サン・ピエール師の永久平和論についての諸見解」を読解し、両者の神聖ローマ帝国理解の差異を鮮明にする。もって、ライプニッツの連邦国家論と「ヨーロッパにおける平和の創出」という論点との理論上の連関をとりだす。 1と2について、所期の目的はおおむね達成されたとみなすことができるであろう。『ドイツ諸侯の主権と使節権』についてはその連邦国家論に関する部分を、『永久平和論』についてはその神聖ローマ帝国論に関する部分を、「サン・ピエール師の永久平和論についての諸見解」についてはその全体を読了した。その結果、ライプニッツの連邦国家論においては「勢力均衡」だけではなく伝統的な「身分制」もヨーロッパの平和の創出に一役買いうるとライプニッツが考えていたことが明らかとなった。これはライプニッツの国家論および平和論に関する従来の見解には見られなかった知見である。この点は最終年度に実施した研究の成果であるだけではなく、研究期間全体を通じた研究の成果でもある。
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