本研究は、ヒュームの道徳哲学を「徳倫理学」の一理論として解釈する途を示すために、ヒュームと現代の徳倫理学理論とを次の三つの論点で、すなわち(1)ある性格を「徳」と認定する際の規準、(2)「正しい行為」の説明、(3)「徳の統一性テーゼ」をどの程度認めるのか、という三つの点で比較することを通じて、「ヒュームの徳倫理学」の彫琢、およびその優位性の検討を行なった。成果として、本研究の目的は、ある程度達成された。ただし、「徳」それ自体の捉え方次第では、ヒュームの思想を「徳倫理学」ではなく「徳理論」として位置付ける可能性が出てきたため、それについてのさらなる考察が、今後の課題となった。
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