以下、本研究課題の目的、そして、本年度における報告者の研究経過及び研究実績の概要について記す。 (研究課題と前年度の研究経過) 本研究課題「オイゲン・フィンクを中心とした現象学的世界概念の包括的研究」は、(1)現象学的世界概念の重要な哲学史的背景のひとつであるカントおよびカント以降の哲学的世界概念の伝統的理解の解明を目指す「世界概念の歴史的解明(現象学的世界概念の前史)」、(2)現象学におけるその哲学的・理論的展開の内実を、主にオイゲン・フィンクの思想を中心として体系的に提示する「現象学的世界概念の体系的解明」、および、(3)その哲学史的位置づけと意義を明らかにする「現象学的世界概念の哲学への貢献の解明」の三つの軸を持つものである。 (本年度の研究経過)本年度は、前年度までの研究成果を受けて、(1)フィンクの現象学的カント解釈とフッサールおよびハイデガーのカント解釈の異同の解明を通じて、現象学におけるカントの世界概念の批判的受容と対決を明らかにし、(2)フッサールとフィンクの現象学的世界概念の体系的解明、および(3)(カントからハイデガー、現代の分析形而上学に至る形而上学的伝統の批判的検討を試みる)マルクス・ガブリエルの「新実在論」を中心とした現代哲学における世界概念の対象とすることで、フィンクを中心とした現象学的世界概念の哲学史的・形而上学史的位置づけ作業に従事した。 (研究実績)本年度は、上記の(1)に関する研究成果としては、公刊論文1本、および口頭発表2本、(2)に関しては、公刊論文3本、(3)に関しては、共著での報告書1本、口頭発表2本の成果を公開した。
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