研究課題/領域番号 |
15K16620
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河崎 豊 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (70362639)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ジャイナ教 / 戒律 / シッダセーナ / 印度哲学 |
研究実績の概要 |
当該年度は,ウマースヴァーティ作『タットヴァールタスートラ』に対する白衣派系注釈のひとつであるシッダセーナ註,および関連諸文献の訳注研究を行ない,研究成果を公表した.具体的には以下の通りである: 1.不妄語の誓戒(虚言を述べない誓戒)に対する記述の訳注研究を行ない,同時に『タットヴァールタスートラ』に対する空衣派系注釈,シッダセーナ以前の諸文献における類似記述,更には仏教文献では虚偽の定義を行なう,ヴァスバンドゥ作『アビダルマコーシャ』および注釈における該当記述を検証した.この成果を『中央学術研究所紀要』45号(平成28年11月)に「ジャイナ教における虚偽の概念をめぐって」というタイトルの論文として公表した. 2.上記の不妄語の誓戒と同様の手順により,無所有の誓戒(aparigrahavrata)に対する記述の訳注研究を行ない,その成果を平成28年9月4日に開催された日本印度学仏教学会第68回学術大会で「ジャイナ教におけるaparigrahavrataの解釈をめぐって」という題目で発表した. 3.上との関連で,仏教における無所有の解釈を批判する,ハリバドラ・ヤーキニープトラ作『ダンマサンガハニ』の該当箇所の検討を行ない,その成果を平成29年3月17日にロンドン大学(SOAS)で開催された第19回 Jaina Studies Workshopにて,"Haribhadra's Criticism of Buddhism on the Concept of Possession (parigraha) という題目で発表した. 4.前年度から継続して,当該課題に関する二次文献一覧公表のために各種資料の情報を収集することにつとめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に記した通り,当初の計画では『タットヴァールタスートラ』第7章へのシッダセーナ註のうち,誓戒を論じる部分のみを検討の対象としていたが,第7章冒頭より検討することに計画を変更したため,当初の予定より若干の遅延を来している.
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今後の研究の推進方策 |
シッダセーナ註の読解,及び関係する諸文献の資料収集については8月末を目途に終了する.過去2年間の成果と共に再検討し,新たに発見された問題と最終的な報告については,9月に開催される日本印度学仏教学会,また10月に開催される予定のジャイナ教研究会で行なう.作成された翻訳については10月以降最終的な検討を行ない,年度内にその内容を検討する小規模な研究会を開催して検証する.そこで得られた訂正案などを反映させた上で,インターネット上(具体的には researchmap か,もしくは akademia.edu を通じた公開を想定している)で試験的に公開する.この段階までで確認される諸問題については,2018年3月にロンドン大学(SOAS)で開催される第20回 Jaina Studies Workshop に参加し,研究者と討議・意見交換を行ない,第2版を同様にインターネット上で公開する. 初年度より収集していた当該研究課題に関する二次文献の一覧については,利便性の高い形で纏めた上で,同様に2018年3月下旬にインターネット上で公開する.
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