研究課題/領域番号 |
15K16623
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
喜田川 たまき (渡邉たまき) 筑波大学, 北アフリカ研究センター, 研究員 (50721685)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 農耕儀礼 / アイデンティティ / 聖者信仰 / 基層文化 |
研究実績の概要 |
1. 文献収集:国内で調査を進めるとともに、入手可能な文献を収集した。また現地においても文献収集を行った。それにより19世紀から20世紀にフランス系人類学者によって重点的に行われた諸々の調査の内容が明らかになった。現地調査で採取される結婚儀礼や農耕儀礼などの慣習は、現在由来やその意味が失われつつあるが、前、前世紀の調査資料との比較により連続性とアイデンティティ形成のための変容の両面があることが明確となった。
2. 現地調査:28年5月、7月、12月、29年1月にわたって現地調査を行った。現地調査ではチュニジア共和国ガベス県マトマタ郡の複数のベルベル村落にて、結婚儀礼、農耕儀礼、村の祝祭、聖者廟への参詣についての聞き取り調査、及び参与観察を行った。特に村落から離れた箇所にある樹木を聖者と見做して参詣する習俗について、複数の参詣地を訪れ、参詣実施に関わる手続きの一般性を明らかにした。また今年度の調査では複数回の調査を実施することで、南部チュニジアにおける食用・薬用植物の象徴性を、他の習俗に広範囲に照らし合わせて考察する事ができた。それによりベルベルに特有の基層文化の諸要素を明らかにすることができ、実施の意義は大きい。
3. 調査データ分析、発表:現地調査で得られた情報を整理するとともに分析を行い、不足した情報を補完するための資料収集を行った。現地調査及び文献調査の結果、南部チュニジアにはベルベル社会特有の農耕儀礼と聖者崇拝の混淆が見られることが分かり、その成果を、10月に国際学会(ISMOO2016)で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チュニジアでの政情不安があったものの、現地大使館及びJICAと綿密に連絡を取り、安全に現地調査を行うことができた。また今後の調査に必要な情報収集にも努め、翌年度の調査へと展開するための基盤を形成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
チュニジアでの調査を引き続き行い、歴史的資料の収集や聞き取り調査を行う事で、前年度得られた成果を発展させる。また、チュニジアでの情報と比較すべく、モロッコ・アルジェリアでの予備調査を始める。学会発表、論文発表は随時行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査では予定していたほどの出費が無かったため、旅費に余剰が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の調査によりモロッコ、アルジェリア調査前の情報収集が可能になったため、来年度、再来年度にかけて十分に現地調査を行うことが可能となった。
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