研究課題/領域番号 |
15K16623
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
喜田川 たまき (渡邉たまき) 筑波大学, 北アフリカ研究センター, 研究員 (50721685)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 農耕儀礼 / アイデンティティ / 聖者信仰 / 基層文化 |
研究実績の概要 |
1. 文献収集:国内で入手可能な文献を収集し、調査を進めた。また現地(モロッコ・ラバト、チュニジア・チュニス、ガベス)においても文献収集を行った。それによって南部チュニジアで観察されたオリーブに関する農耕儀礼及び聖者信仰と複合した習俗が、当該地域以外でも行われていた事、また前世期のそれと比較して現在見られる現象の変容が確認された。植民地時代以降の人類学者によって行われた諸調査の内容と、本研究の調査によって得られた内容を詳細に比較検討し、フォローアップ調査を行う際の指針とした。
2. 現地調査:29年5月(モロッコ、チュニジア)、8月(チュニジア)、11月~12月(チュニジア)に現地調査を行った。チュニジアでの現地調査では、ガベス県の複数村落にて、聖者廟への参詣についての聞き取り調査、参与観察を行い、先年度までのベルベル(アマジグ)村落の調査結果との比較を可能にした。それにより当該地域で行われている樹木崇敬と聖者崇敬とが融合したオリーブ聖者複合の全体像をつかむことができた。オリーブ聖者複合は、イスラームの受容度によって、その解釈のされ方に差があることが了解された。またチュニジアで得られた結果の北アフリカの他地域での汎用性を調べるため、モロッコでの予備的文献調査をラバト、国立アマジグ研究所の協力のもとに行った。それにより来年度予定しているモロッコでの食用・薬用植物の象徴についての現地調査の基盤となる情報の蓄積と、実施候補地選定が可能となった。
3.調査データ分析、発表:現地調査で得られた情報を整理するとともに分析を行い、不足した情報を補完するための資料収集を行った。また、オリーブをめぐる文化の日本における受容調査を行った。それら調査で得られた成果を11月のJSPS二国間セミナー、チュニジア-日本 文化・科学・技術学術会議にて報告した。また海外の学術雑誌2報に論文を掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チュニジアでの政情不安があったものの、現地大使館及びJICAと綿密に連絡を取り、安全に調査を行う事が出来た。アルジェリアでの調査は安全上実施に問題があるため、基層文化の普及についての調査はモロッコで行う事とした。また、今後の調査に必要な情報収集にも努め、翌年度の調査へと展開するための基盤を形成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
チュニジアで得られた調査結果が、北アフリカの基層文化としての汎用性があるかを査定すべく行われる現地調査を、モロッコで行う事とする。今年度の予備調査で得られた、近似性のある習俗をもつ地域で、現地調査を行う。学会発表、論文発表は随時行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査に当たっては研究代表者が参画している別経費をもって行ったため、今年度の旅費に余剰が出た。 次年度予算と合わせ、次年度における現地調査と海外での学会参加費として充当する予定である。
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