研究実績の概要 |
本年は最終年度にあたるため、これまでの調査データとその分析結果を検討し、補足すべき項目を確定し、補足調査を行った。調査によって得られたデータと分析結果とを照らし合わせ、学会発表及び論文発表を行った。
1. 研究成果と補足現地調査:これまでにチュニジアおよびモロッコで行った調査から、オリーブをめぐる信仰、習慣の意義が明らかになった。薬効に還元できない象徴的意味作用としてのオリーブ聖者やオリーブ信仰は、アマジグ村落などイスラームの教義的な信仰の周縁において存続し、女性を中心とした小規模共同体的つながりのなかで結婚、出産といった個人のライフサイクルと農耕暦とに連動しつつ、彼らの生活を全的に支えている。本年はこれまでにインタビューで情報採集しつつも参与観察に至らなかった、圧搾過程を用いない青銅器時代にさかのぼるオリーブオイルの原初的製法を観察・撮影するためチュニジアで現地調査を行った。オリーブ民間薬の象徴的意味がそれにより明らかになった。 2. 文化受容性調査結果の出版:昨年までにオリーブ聖者複合信仰を含むオリーブに関わる宗教文化に対する消費者の受容性の調査分析を行い、オリーブの伝統的食文化や宗教習俗に関する情報は、日本人のオリーブオイルの購買意欲を向上させることが明らかになった。これらの結果を成果として論文にまとめ出版した。 3. 研究発表:オリーブオイル消費者の文化受容性調査の成果について、7月に行われたThe European Conference on Ethics, Religion and Philosophy 2019において発表した。11月にはTunisia Japan Symposium for Science, Society and Technology 2019においてチュニジア・モロッコでの調査結果を基に食の宗教的価値について発表した。
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