仏教経済学と西洋経済学は、それぞれ「利己」と「利他」によって特徴付けられ、互いに対立・反目するものであるかのように捉えられてきた。しかし、このような単純な対立構造に集約することはできない。このことを明らかにするために、選択の合理性に着目し、特にダライ・ラマ14世のwise self-interestを取り上げながら、アマルティア・センの議論との類似性に迫った。自己利益は他者利益の追求のうちにあるというwise self-interestにおける合理性は、理性的精査としての合理性という点において、現代経済学と同じくself-interestの追求を目的とした合理性であると考えられる。
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