平成29年度は、研究期間の最終年度にあたるため、①不足資料の収集、②これまで収集した資料に基づく総合的な分析、③学会等における成果発表を行った。 ①については、奄美北部(旧笠利町・旧名瀬市・龍郷町)の神社について、神社の担い手からファミリーヒストリーの聞き取りを行なう予定であったが、調査対象者との日程が合わなかったことから、郷土誌や文献資料の収集に時間をあてた。 ②については、これまで収集してきた文献資料や奄美北部の神社の巡検調査の資料をもとに分析を行った。分析においては、研究当初の目的にそって、奄美群島において外来宗教としての性格が強い神社を、現地の人々がどのような論理や枠組みで受容するのかに重点をあてた。 ②の分析については、平成29年度日本宗教学会の個人発表や平成29年度東アジア宗教研究フォーラムにおいて成果の発表を行った(③成果発表)。それらの発表では、奄美群島の神社は、当該地域にとって外来宗教としての性格が強いが、それが地域住民に受容される上では、シャーマニズム(ユタ)やノロ祭祀、祖先崇拝といった現地の民俗信仰の枠組みにしたがって受容されていることや、そうした民俗信仰をベースとして平成以降にも新たな神社が創建されていることを指摘した。 今年度で研究期間は満了となるが、今後の課題として、本研究で遂行できなかった現地の人々(神主や氏子等の神社の担い手)へのインタビュー調査を行いたいと考えている。それによって、文献調査のみでは明らかにできなかった、神社の受容過程をより詳細かつ実証的に把握したい。
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