本研究の目的は古代ギリシアにおける芸術に関する諸概念を調査し、それらを現代のものと比較検討しながら、その差異と意義を明らかにすることである。研究の最終年度にあたる本年は、研究成果のとりまとめと公表を主な目的として活動した。 9月には京都大学にて開催された記念研究会において、プラトンにおける哲学者の模倣行為について先行研究を批判的に検討し、古代ギリシアの文芸論と美学的思想の関係について、従来とは異なる解釈を提示した。国際的な研究成果の発信にもつとめ、5月にはイタリア・シチリアで開催されたThird Interdisciplinary Symposium on the Heritage of Western Greeceに出席し、プラトンの『ティマイオス』篇における模倣概念を分析の結果を発表し、古代文芸理論において模倣概念がどのように適応されてきたのか詳細な検討を行った。そこでは表象概念と模倣概念の差異を指摘し、古代文芸論における芸術に関する概念が現代の概念には捉えきれない多様性を内包していることを明らかにした。会合では有力な古代ギリシア哲学研究者たちと研究交流し、今後に研究をさらに発展させるために、将来的な協力関係の構築にも努めた。 さらに、本年度の研究成果は、2018年4月に台北で開催された国際プラトン学会のアジア地域会合でも公表し、より一層の国際的な研究成果の発信にもつながっている。
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