3年間の研究期間で行った本研究は、研究企画当初は予定していなかった海外における研究の機会を中間年度にもったことで、研究資料や手段等を大きく変更することとなった。 初年度は当初の予定通り、資料の入手やそれを計測するためのソフトウェアの開発を行い、一つの曲のピアノロールのデータを実際にとり、分析することで、分析のプロセスや方法を検討し、それらについては概ねの方向性が定まった。 中間年度は、スタンフォード大学(アメリカ)で客員研究員として研究活動する中で、ピアノロールだけでなくより多様なデータ(サウンド録音のデータとMIDI化したピアノロールのデータ)を用いることができ、かつより迅速に分析する方法が見つかったことから、データ取得や分析の手段を変更した。また、演奏分析を進めるかたわら、その手法を用いる際のデータ資料間の差異等、データの特性について詳細に検討し、それらの成果を博士論文としてまとめた。 最終年度は、データ資料間の関係性をより明確に把握するための分析を進めると同時に、分析曲の対象の幅を広げ、演奏分析を進めた。また、今後の研究につなげるため、ヨーロッパ国内の関係機関における所蔵資料や各国の研究者らの研究状況を調査した。今後研究を進める上での指標となるデータ資料間の関係性についてはそれらを数値化して比較を行い、各資料の特性や分析時に留意すべき点が確認できた。 研究の成果については、国内外の学会及びシンポジウムにおける発表の他、博士論文を含む複数の論文にまとめた。
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