研究課題/領域番号 |
15K16643
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研究機関 | 北海道博物館 |
研究代表者 |
春木 晶子 北海道博物館, 研究部, 学芸員 (50591864)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本美術史 / 近世絵画 / 18世紀 / 蝦夷 / 蠣崎波響 / 異人 / 異国 / 松平定信 |
研究実績の概要 |
アイヌ民族を描いた絵のなかでも、「夷酋列像」に焦点を当て、調査を行った。松前藩士の蠣崎波響が描いた「夷酋列像」は、同時代の文人たちに評価され、ときの光格天皇の目に触れ、諸大名の求めでたびたび写され、複数の模写がつくられた。この絵は、18世紀末から今日にいたる蝦夷地イメージの形成と変容を探るうえで、恰好の対象と言える。この模写を含む諸本の制作、閲覧に関わる資料の調査を、下記のとおり行った。①『波響画譜』の調査・撮影(松前町個人宅):これは、蠣崎波響が「夷酋列像」の制作に利用した月僊の『列仙図賛』の写しを含む画譜で、絵の制作過程を探るうえで、また、仙人と重ねられた蝦夷のイメージを探るうえで、有用な資料である。②蠣崎波響に関わる絵、アイヌ民族を描いた絵、同時代に中国の武将や功臣を描いた絵の調査・撮影(兵庫県個人宅):本研究が直接対象とする資料に加え、「夷酋列像」制作のための参考とされたと考えられる、同時代に中国の武将・功臣を描いた絵の調査を行った。③「夷酋列像」の模写を行った絵師、渡辺広輝・守住貫魚の調査(徳島県立博物館・徳島城博物館):渡辺広輝・守住貫魚の作例の大多数を占めるやまと絵と、「夷酋列像」模写とを比較し、「夷酋列像」の特質を明らかにするため、調査を行った。④「夷酋列像」の閲覧・模写に関わる文人や大名達の交友の調査(国立国会図書館ほか):平成27年度は特に、「夷酋列像」と松平定信との関わりに注目して調査した。次年度以降も継続して行う。 また、所属研究機関である北海道博物館は、国立歴史民俗博物館、国立民族学博物館と共同で、「夷酋列像―蝦夷地イメージをめぐる 人・物・世界―」展を開催した。研究代表者はその企画・運営に携わり、展覧会のための調査で得た成果と、本研究で得た成果を相互に利用し、展覧会やその関連事業などで、研究成果の一部を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査地や調査内容に変更を加えたものの、計画していた資料の所在調査、画像の入手は順調にすすんでいる。
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今後の研究の推進方策 |
調査をすすめるなかで、「夷酋列像」とその模写に関わる人物のつながりを調べることで、アイヌ民族を描いた絵画の所在について、有用な情報を得られることが明らかになった。計画以上に、この調査に時間を割き、今後も継続して行っていくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた調査を次年度に実施することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の調査の旅費とする。
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