研究課題/領域番号 |
15K16644
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
佐々木 あすか 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (80620757)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 美術史 / 日本彫刻史 / 仏像 / 仏師 |
研究実績の概要 |
本研究は、平安時代後期から鎌倉時代前期に活躍した中央仏師(院派、円派、奈良仏師)のうち、いまだ不明な点の多い京都仏師(院派、円派)の鎌倉時代前期における造像活動と新形式、新様式の展開を明らかにすることを目的としたものである。 平成27年度は、本研究で対象とする京都仏師または周辺作とみられる作品群(これまでの当方の着衣形式の研究において「折衷型」に分類できる一群、以下「「折衷型」作品群」と称す)について、基礎資料の収集、「折衷型」作品群に共通する造像の型を想定するための細部形式の分析、伝来の検討をおこなった。 これらの作業のうち、基礎資料の収集と伝来の検討については、滋賀県観音寺聖観音菩薩像など、おもに資料収集が不十分なものや、未見作品を中心に、写真資料の収集、見学などをおこなった。伝来については、公刊史料や地誌の収集・検討のほか、近代の宝物調査関連史料の閲覧・写真撮影をおこなった(滋賀県庁県政史料室、大阪府立公文書館など)。また、「折衷型」作品群の伝来や、今後、中央との造像ネットワークの検討を進めるうえで、京都仏師基準作の検討を補助的に活用することが必要ではないかと考えた。そのため、当初の研究計画に加える形となったが、今年度は特に大覚寺五大明王像の伝来について資料収集・撮影をおこなった。 細部形式の分析については、これまで収集した資料に現地での見学の結果などを加え、画像をデジタル化し、検討項目を分類表として作成している。今年度の見学により、例えば頭頂で髪をまとめた髻の形式について、「折衷型」作品群のなかでも細部においてはヴァリエーションが多いことが判明した。しかし、髻を構成する造形要素に前代までとは異なる新たな共通点が指摘でき、一定の造像の型の存在を想定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の年度末に実地調査をおこなう予定でいたが、日程調整の都合により、平成28年度に実施を延期した。しかし、基礎資料収集や見学、それに基づく細部形式の分析、伝来の検討など、そのほかの作業はおおむね予定どおりに進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、当初の研究計画どおりに進める予定である。平成27年度に延期した実地調査をおこなう必要がある。平成28年度は、「折衷型」作品群の伝播過程と造像ネットワークの検証をテーマとしており、各地に広まった造像の型がさらにその地で発展した可能性とその過程を検討する。平成27年度におこなった細部形式の分析では、ある一定の造像の型を指摘できる一方、細部まで一致する例が少ないことが明らかになった。その理由の解明も課題となるが、細部の共通点と相違点の双方を抽出する分析方法によって、同一地域内での形式伝播の過程を、より詳細に跡づけることを目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の年度末に予定していた実地調査が、日程調整の都合により延期となったため、次年度使用額が生じた。これは、おもに実地調査にともなう研究協力者分を含む旅費と、データ整理のための謝金である。
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次年度使用額の使用計画 |
延期となった実地調査をおこない、旅費、謝金として使用する。そのほかは、平成28年度の研究計画どおりに使用する予定である。そのおもな内容は、調査・見学のための旅費のほか、調査に必要な三脚の購入や、対象作品の写真資料購入費(博物館の原板利用など)、収集した画像の処理をおこなう画像編集ソフトのライセンス購入、資料収集および史料の検討のための図書購入費である。
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