研究課題/領域番号 |
15K16645
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
和田 積希 京都工芸繊維大学, 美術工芸資料館, 特任助教 (50746112)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 美術史 / 図案教育史 / ガラススライド / Franz Stoedtner / 京都高等工芸学校 / 近代京都 / ドイツ / 幻燈 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、フランツ・シュテットナー博士(Dr. Franz Stoedtner)が、1895年にベルリンに設立した「学術用映写研究所」製のガラススライドに焦点をあて、製作・販売の実態を明らかにし、明治・大正時代の日本の高等教育機関における美術・デザイン教育にどのように活用され、効果をもたらしたのか確認することである。 平成28年度は、京都高等工芸学校における当該ガラススライドの利用実態調査を進め、最初の納入品が初代校長中澤岩太により現地で選択・購入された可能性があることを指摘できたほか、同時代のデザインの流行を反映したもの、美術史をまなぶためのもの、建築装飾に注目して選択されたものと、各々の購入目的と利用範囲をある程度あきらかにすることができた。同校では、図案教育の参考として多くの実物資料が購入されたが、複製資料であるスライドが補助的役割を果たし、実物を見ることの難しい作品について、学生たちに様々な視覚的情報を与える重要な教材であったことが検証できた。並行して、創立年度の早い日本の高等教育機関に、同種のスライドの所蔵や整理状況等を尋ね、当時の利用実態の検証を試みたが、その所蔵は確認できなかった。回答を得られなかった館もあり、この調査は継続していく必要がある。さらに、海外における所蔵調査としてドイツのハイデルベルク大学を訪問した。この調査結果は、現在分析中である。また、関連調査として、京都高等工芸学校で同時期に購入された機織と紡績に関するオーストリア製のスライドについても分析をおこない、教育カリキュラムと照合し、その利用実態の一端をあきらかにした。 以上の調査をもとに、画像関連学会連合会 2016年秋季大会にて研究発表をおこない、公益財団法人中信美術奨励基金『美術京都』49号に研究論文を投稿した。また、意匠学会誌『デザイン理論』68号に前年度投稿した論文が掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該ガラススライドと京都高等工芸学校の教育プログラムとの関連性が明らかになってきた。また、当該ガラススライドを所蔵している海外の高等教育機関で実地調査をおこなうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
当該ガラススライドが実際に使用された高等教育機関での調査を積極的におこなう。当初想定していた日本の高等教育機関における当該ガラススライドの使用事例は現在のところ見つかっておらず、引き続き調査を進める。一方で、ドイツのハイデルベルク大学の調査結果について分析をおこない、さらに本研究を通じてあらたに所蔵を確認したドイツの他の大学およびアメリカの大学が所蔵する当該ガラススライドの調査をおこない、海外の高等教育機関における当該ガラススライドの利用目的をあきらかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該ガラススライドを所蔵する日本の高等教育機関での調査を予定していたが、調査先がみつからず今年度は、実現できなかったため。また、海外での調査候補先が複数みつかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度請求分の助成金とあわせて、日本の高等教育機関での調査をおこなうとともに、当該ガラススライドを所蔵するドイツの他の大学およびアメリカの大学を訪問し、調査をおこなう。
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