最終年度である2017年度は1年の研究期間延長申請によるものであり、延長理由は2017年6月にイスタンブルで開かれた国際会議にて最終の研究成果の発表を行うためであった。これは計画段階では2016年度中に行う予定であったが、国際会議の日程に合わせて2017年度に行うこととなったために研究費の一部を2017年度に使用する必要が生じたためである。当該会議での発表原稿は国際会議のproceedingsに集録されることで成果を公表した。 また、本研究は2016年度末までにアル=カズウィーニーの『被造物の驚異』写本の挿絵調査を終了し、2017年度においては、16世紀以後の写本の調査及び16世紀以前の写本の挿絵との比較分析を行なって模倣の伝統の詳細な解明を試みた。その成果の一部は国際ジャーナル誌に投稿し掲載されている。2017年度には、本研究にて収集した資料をもとに中世イスラームの博物誌にみる異形の身体の視覚的表象について、模倣の伝統という観点からその起源と展開を解明することを試みた。その成果として、2017年7月に国立民族学博物館にて「イスラーム世界の博物誌における異形の身体」と題して研究発表を行った。現在はこの研究をまとめた論文を執筆中であり、2018年度中に発表する予定である。 さらに、当該研究課題は「国際共同研究加速基金」として継続することが決まっており、2017年12月にはロンドン大学SOASにて今後の研究について共同研究者と打ち合わせを行なった。
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