本研究では、シュルレアリスムとは異なる抽象芸術を展開した「アブストラクシオン・クレアシオン」グループに加え、自然界のモチーフを作品に導入していながら十分な研究の及んでいないピュリスムの活動を主な対象として、次の点を明らかにした。 キュビスムの芸術観の基盤となったベルクソンの思想はスペンサーの社会進化論に影響を受けたものであることを確認し、19世紀末の進化論的な思想まで遡りながら、1930年代の自然観の形成の過程を考察した。とりわけ、ル・コルビュジエとアメデ・オザンファンによるピュリスムが示した機械の美学が進化論をモデルとしていたことに注目し、20世紀初頭の前衛的な動きに「自然」の世界に新しい調和的な特質を見出そうとする姿勢がすでに内包されていたことを明らかにした。
|