本研究は、鎌倉時代に盛んに制作された仏教説話画である社寺縁起絵と高僧伝絵を対象とし、これらにどのような人々が制作者、斡旋者として関わったかを明らかにすることを目的とした。 社寺縁起絵と高僧伝絵の結節点となる重要作品として、国宝「一遍聖絵」について重点的に調査研究を進めたところ、中世律宗が仏教諸宗派と中世絵画の制作現場をつなぐ重要な役割を果たしていた可能性を引き出すことができた。この知見は他の同時代作品研究に応用できることもわかり、今後もさまざまな新解釈への発展が期待できる。また、社寺縁起絵・高僧伝絵制作が再興した近世前期にも共通する社会構造を見出すことができた。
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