平安時代後半から盛んに制作された白描図像を表現の点から分析を行い、白描の手法によって描かれた歌仙絵や物語絵と比較することで、画題と表現とに相関性があることを明らかにした。さらに、鎌倉時代に流行する肖像表現である「似絵」の発生、および仏画における水墨技法の受容の問題について、白描図像からアプローチを行い、その一端を図像が担った点を明らかにした。一方、図像の描き手の観点から画僧、絵仏師、宮廷絵師を比較対象とし、画僧の特色や三者の違いについて明らかにした。また、個々の図像や仏画作例から得られる情報を整理することで、白描図像を介した人的ネットワークが機能していた点を明らかにすることが出来た。
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