2017年度は前年度までに渉猟した資料の分析とそれにもとづく研究発表を行った。フランス植民地行政高官G・アルディの1920年代から30年代にかけての諸論文、会議録、著書等を中心に考察を進め、植民地西アフリカにおける文化変容をめぐる言説とそこに作用する家父長主義的かつ地方尊重主義的文化行政観を、ダオメの新たな彫像文化の現れを例に分析を進め、植民地時代のダオメにおける真鍮製彫像の登場と(非)宗教的彫像の文化的役割を明らかにした。前年度に引き続き、宣教師F・オピエに関する分析も行い、植民地地域の宗教と芸術の「保存」と「変容」を、ライシテ時代の植民地地域におけるカトリック布教も視野に入れた考察としてまとめた。本研究はアフリカ芸術の変容を主題としつつも、植民地文化のダイナミクス、植民地行政理論の分析、ライシテ時代の海外布教等を視野に入れたこれまでにないアフリカ芸術研究を実施できたものであると考えている。 最終年度ということもあり、本研究を同時代のフランスとアフリカの植民地主義的関係だけでなくライシテの成立との関わりという観点から日仏シンポジウムを開催し(科研費16K13161との共催)、政治的・文化的コンテクストを踏まえた趣旨説明および上述の研究成果を公表した。同シンポジウムでの発表を踏まえた論集が2018年度に公刊予定である。上記の日仏シンポジウムとは別に、8月にも日仏シンポジウムにて研究発表を一件(同研究は報告集の形で2017年度に刊行されている)、前年度行われた日仏シンポジウムでの研究発表の成果論集を一件発表したのに加え、本研究の基盤となる研究代表者による先行研究を『〈ニグロ芸術〉の思想文化史』としてまとめ3月に刊行した。
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