研究課題/領域番号 |
15K16662
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
馬場 一幸 東京藝術大学, その他の研究科, 助教 (20621791)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超高精細映像 / 映像記録 / 耐障害性 / 映像フォーマット |
研究実績の概要 |
超高精細(8K)デジタル映像について,「記録媒体の寿命を超えた長期の保存」と「映像記録の利活用」とを両立させるための現時点での最善策と将来的に取り組むべき課題とを明らかにする。 国宝修復作業を映像で記録することは遠い将来に再び実施されるであろう修復作業にとって有益な情報となる。デジタルデータはコピーを繰り返すことで現記録媒体の寿命を超えて無期限に保存が可能である。そのためには(1)コピーが安定して容易に可能であること(2)将来的にもコピーされたデータの可読性があることが重要になる。記録媒体の物理的耐久性ではなく,記録されるデータ(映像のフォーマット)に注目し,調査・検討の結果は実際に国宝修復の映像記録(源氏物語絵巻『横笛』,徳川美術館所蔵,撮影は平成26~27年)に適用する。 映像フォーマット,記録媒体のファイルシステム,データの転送経路の3点について基礎的な検討をする。数種類の組み合わせ候補を立て,データの転送・変換を試験する。処理にかかった負荷・安定性を比較し,効率的運用を検討するための基礎的な情報を得る。映像データの受け渡しや整理(メタデータの扱いや命名規則等)について検討し,単純なデータの完全性ではなく映像記録として有効に機能する形式を目指す。 ストレージに障害が生じた場合の対応として,データ復元にかかるコストやダメージの程度,デジタル画像復元処理の応用について検討する。 並行して既存の映像記録の扱われ方についても調査し,実験結果とあわせて現時点での最善策を検討する。その後,一連の手順に従って実際の記録映像データを整理し保存版の作成に着手する。保存版の作成にあたっては映像データ自体のほかにも映像フォーマットに関する情報やデータ整理の方法自体も同封しておく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ストレージ障害のシミュレーションを想定していたが,偶然,実際に障害が発生した個体を入手できた。 本研究とは別の研究環境整備計画によって導入された4K映像の高速処理が可能なシステムを利用することができた。 調査を進める中で,内容未確認のフィルムが多数残されていることがわかった。デジタル化されていない理由は手間と費用のためである。フィルム映像のデジタル化について,従来よりも安価,効率的,高品質なデジタルスキャン技術を考え,特許出願した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画時に懸念される事態として想定していた通り,ある企業によって開発され広範囲に利用されていた映像コーデックについて,企業が今後ソフトウェアサポートを終了することが発表された。 互換性,利便性,長期の可読性を担保できるオープンフォーマットについて検討を進めたい。 存在が確認されたデジタル化されていないフィルムに対し,特許出願したアイデアを元にフィルムスキャナを作成できるよう発展させていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に賛同する企業や団体から協力を得て,当初予定より旅費を圧縮することができた。 ストレージ障害の実験を予定していたが,偶然,障害が発生したストレージを入手することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
特許出願中のフィルムスキャナ試作機の制作費の一部に充当したい。 画像処理について,ネットワークを利用したクラウド型システムの構築の可能性を検討しており,その実験に充当したい。
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