本研究は、障害者とそうでない者が参加する音楽活動において、物理的環境、社会文化的背景、人的リソース等の関連からどのように即興音楽の形態が生み出されているのかを調査・分析するものである。国内外の障害者を含む芸術活動を行う団体を視察した結果、複層的に価値観が存在できるような具体的な環境設定の方法や即興表現形態を見出すことができた。こうした障害者の関わる表現は、芸術か福祉かという二項対立的な観点からしばしば議論されるが、即興による音の対話という側面が、そうした二項対立を超えて、倫理的観点と美的観点の双方を往復しつつ、支援と共にある障害者の主体的表現を生み出すことを可能としていることが見出された。
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