研究課題/領域番号 |
15K16668
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
河原 大輔 九州大学, 言語文化研究院, 学術研究者 (20724024)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 映画 / デジタル化 / 映画館 / 技術移行 |
研究実績の概要 |
本年度は、初年度に実施したデジタル映画の規格標準化を巡る動向に関する調査を元に、大きく分けて、(1)言説資料の収集・分析の継続と(2)グローバル・スタンダードとしての規格標準化がローカルな興行セクターに与えた影響に関する調査の二点に照準を合わせて研究を行った。(1)の言説資料に関しては、当初の想定以上にオンライン・データベース上で収集・閲覧が可能な資料が多く、引き続きアメリカ合衆国における映画産業従事者の利害衝突についての言説資料を収集し、分類を行った上でデータベースの構築を開始した。そのため予定していたアーカイブ調査は映像資料の閲覧に重点を置いた上で、最終年度に実施することとなった。言説調査に関する考察結果については、初年度に実施した規格標準化を巡る動向についての分析と統合する形で、その2016年12月に北海道教育大学で行われた日本アートマネジメント学会年次大会において口頭発表を行った。(2)のデジタル映画の標準化がグローバルな規模での映画興行に与えた影響に関する調査については、日本における独立系興行館を考察対象に設定し、主に地方都市のミニ・シアター(アートハウス)映画館主、経済産業省との折衝ならびに映画館との連絡を行ったNPO事務局担当者(当時)にインタビュー調査を実施した。インタビューデータの文字起こし作業に関しては研究協力者を雇用し、謝金を支出した。インタビュー調査と並行し、デジタル化をめぐる動向をアメリカ合衆国との比較的観点から考察するために、デジタル化に対する公的助成制度についての研究を開始した。以上の研究、調査をまとめ、論文執筆を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
デジタル映画の標準化がローカルな興行セクターへ与えた影響を詳細に把握、検討する必要が出てきたため日本の映画興行者への聞き取り調査を開始した。主に地方都市のミニ・シアター(アートハウス)映画館主、一般社団法人事務局担当者(当時)に対して聞き取りを行った。ミニ・シアターについては、興行を行う上での目安とされる人口50万程度の都市を基準とし、(1)大都市圏・政令指定都市、(2)人口50万都市、(3)(2)以下の人口の都市の三つに大きく分類し、それぞれの聞き取りデータを収集するよう務めた。調査自体は概ね順調に実行できたが、映画館が全国に点在していることもあり、また出張費用の制限もあり、現在のデータには映画館所在地の地域的な偏りがある。次年度においても聞き取り調査は継続し、サンプル数を増やす予定である。また初年度の研究内容を元にした論文の完成と投稿開始が予定よりも遅れた。完成させた論文は次年度内に発表する計画である。
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今後の研究の推進方策 |
デジタル映画標準化がローカルな興行セクターに与えた影響を検討するために開始した聞き取り調査を継続し、サンプル数を増加させる予定である。次年度が最終年度となるため、研究初年度と次年度に実施した言説分析、インタビュー調査、理論的考察の結果を統合し、研究期間を通して逐次発表した学術論文ならびに学会発表原稿をまとめる計画である。今年度に概ね完成させた学術論文に関しては投稿作業を継続し、発表媒体の確保に務める。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外におけるアーカイブ調査が最終年度に持ち越されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
アメリカ合衆国においてアーカイブ調査を実施することを予定している。
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