研究課題/領域番号 |
15K16676
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
篠木 涼 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (00536831)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 心理学史 / 視覚文化 / メディア / ポストヒューマン / 行動主義 / 行動療法 / キューブリック / 時計じかけのオレンジ |
研究実績の概要 |
本研究は、現代の人間の心をめぐる議論からポストヒューマン論にまでつながる、20世紀に大衆化・応用化したアメリカ心理学における心の自律と制御のあり方を歴史の中から明らかにすることを目的としている。2016年度は、2015年度に研究発表を行った行動主義心理学と行動療法をめぐる研究を論文化し刊行するとともに、2017年度につながる資料調査を行った。 研究論文「『時計じかけのオレンジ』によって引き起こされた行動主義をめぐる「イメージ」への影響 ―1960―70年代における行動主義心理学と行動療法への批判を中心に― 」は具体的には以下の内容である。行動主義心理学は、20世紀前半からアメリカを中心に心理学の研究指針として、心理学のみならず社会科学全般に大きな影響を与えたが、哲学を除いて文化的動向との関係性は明らかにされてこなかった。その要因としては、行動主義が、文化理論に大きな影響を与えた精神分析とは異なり、それ自体として芸術や文化の批判・批評のための理論を形成しなかったということが考えられる。しかし、行動主義が、文化的メディア的状況と無関係だったわけではない。行動主義心理学とその応用である行動療法は、B・F・スキナーを中心にしばしばメディアで取り上げられてきた。また、1960年代から70年代にかけての反精神医学の流れを含んだ管理社会批判のなかで、批判的対象として扱われもした。とりわけ、1970年代初めにスキナーの著書『自由と尊厳を超えて』が刊行され、またスタンリー・キューブリック監督による映画『時計じかけのオレンジ』の描写が話題になったことで、行動主義的なコントロール概念と、管理社会批判、そしてイメージが結びついた。本論文は、この事態を、文化と科学の相互的な関係性という観点から明らかにする意義があると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度の進行状況は、成果の発表は研究論文1本であったが、2016年度9月に実施した資料調査が順調に進んだ。本調査では、アメリカ議会図書館において、20世紀半ばの心理学を含む社会科学の応用とメディアとの関係性を検討するために、プロパガンダとパブリック・リレーションズに焦点を当て資料収集を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は最終年度であるため、アメリカの動向から20世紀半ばの日本の研究への影響を明らかにする論文を執筆するとともに、これまでの研究計画を総合することを目的とし成果の書籍刊行を目指す。
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