研究課題/領域番号 |
15K16682
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
黒田 俊太郎 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (10646946)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中河與一 / 浪漫主義 / 全体主義 |
研究実績の概要 |
平成28年度の成果は、拙稿「中河與一の〈初期偶然論〉における必然論的側面 ―小説「数式の這入つた恋愛詩」の分析を通して」『鳴門教育大学研究紀要』第32巻、平成29年3月)にまとめた。申請者はすでに、拙稿「メカニズムからの飛躍―中河與一の〈新科学的〉という発想について」(『鳴門教育大学研究紀要』第31巻、平成28年3月)において、中河與一の芸術理論である「偶然文学論」の萌芽的発想である〈新科学的〉なる思考(=〈初期偶然論〉)を跡付ける作業を行っているが、本年度は、そうした思考が獲得された直後に発表された小説「数式の這入つた恋愛詩」(『科学画報』昭和5年9月)を分析し、〈初期偶然論〉という理論がいかにして実作へと応用されたかを検証した。そのことを通じて同小説には、中河がその直前に提唱していた芸術理論である「形式主義論」の到達点/限界点が示されていることを解明した。 また本年度は、拙稿「二つの近代化論―島崎藤村「海へ」・保田與重郎「明治の精神」」(『語文と教育』第30号、平成28年8月)において、中河與一の理論に多大な影響を与えた保田の日本浪曼派的思考をおさえるという作業も併せて実践した。ここでは、中河も属した日本浪曼派を理論面で牽引した保田與重郎の評論「明治の精神」(『文芸』昭和12年2月~4月)を中心に、昭和10年前後の保田の〈近代化論〉を検討するとともに、戦時下において〈大東亜共栄圏〉思想に漸近していくこととなる島崎藤村の〈近代化論〉を保田のそれと対照させ、影響関係を析出するという作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中河與一の「偶然文学論」の萌芽的思考である〈初期偶然論〉が、創作にいかなる影響をもたらしたのかということに関する具体的な考察ができた。また、「偶然文学論」から「全体主義」に至る理論的変節をたどる上で参照すべき資料の収集ができた。これに加え、中河の理論に影響を与えた保田與重郎の思想についても分析し、論文化することができた。これにより、研究計画において平成28年度に予定していたことを概ね完了させることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、中河の理論面に関する発言を見ていくことで、中河の芸術理論の変節を追跡するとともに、理論が実作へと応用される様態を分析する。その際、「偶然文学論」の形成に深く関わったと考えられる宇宙物理学や当時の日系移民に関する文献、中河の古典回帰の動向と連動して言及が増加する日本の和歌に関わる研究などを視野に入れつつ、調査・分析を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に研究を予定していた範囲に係る書籍・雑誌記事・新聞記事等の収集に際し、旅費を削減することができた。また、その他備品等についても、新たに購入する必要性がなかったため、使用を控えた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度以降は、調査対象及び範囲の拡大にともない、関係図書・資料の購入・文献複写費の増加が見込まれるため、国立国会図書館等に赴く旅費として使用する。
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