研究課題/領域番号 |
15K16687
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
鈴木 貴宇 東邦大学, 理学部, 講師 (70454121)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | プランゲ文庫 / 占領期 / 社会心理 / 表象分析 / 戦後日本社会論 / 青空 / 労働組合 / 戦災孤児 |
研究実績の概要 |
2016(平成28)年度は、米国メリーランド州立大学図書館プランゲ文庫での資料調査と、本研究遂行にあたり協力体制にある早稲田大学20世紀メディア研究所にての国際シンポジウム開催が、主要な研究実績となった。 1:プランゲ文庫での資料調査 「20世紀メディア情報データベース」(文生書院)を基に、同文庫が所蔵する占領期に刊行された雑誌の実地調査を行った。本研究は、「青空」表象が占領期の日本社会を考えるうえで重要な意味を持つのではないか、との仮説から出発しているが、調査の結果、例えば労働組合機関誌「青空」(日本水産株式会社捕鯨部労働組合教育部:宮城県)が代表するように、戦後の解放感を象徴する表象として機能していたことが明らかとなった。そのほか、「青空を求める子供たち」と戦災孤児を表現する記事など、敗戦後に生じた集団的な悲しみからの脱却が、「青空」表象には反映されていたと言えるだろう。 2:早稲田大学20世紀メディア研究所による国際シンポジウム「雑誌に見る占領期:福島鑄郎コレクションをひらく」の開催 当初の予定では、最終年度に本研究の成果も加えて、シンポジウムの開催を考えていたが、同研究会の100回記念も兼ね、占領期雑誌の研究家として知られる故福島鑄郎氏の業績と、そのコレクションの意義を一般に伝える国際シンポジウムが2016年9月18日(於早稲田大学)にて開催された。ウィスコンシン大学歴史学部のルイーズ・ヤング教授(Dr.Louise Young)を基調講演者に迎え、戦後日米関係の様態と変容というより巨視的な観点から、出版メディアの調査と研究が今後の課題となることが明らかとなった。本研究との関連でいえば、シンポジウム開催に伴い、記念企画展示を同大学大隈タワーにて行った際に、プランゲ文庫調査で得た知見を基に、「労働・経済」というジャンルのもと、福島コレクションの整理と展示を担当した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2016年度は、最終計画に予定していた国際シンポジウムの開催が適ったことから、予想以上の進展を見ることができたと言える。特に、アメリカの日本研究者たちとの人的ネットワークの広がりを得たことから、本研究の更なる深化が予期されると言えよう。また、国内にあっても、労働組合文化運動と戦後サークル詩誌の研究業績をまとめる機会を得たことから、本研究の中心的なテーマとなっている「占領期の青空表象」を、より多くの資料に基づいて抽出することができることになった。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2017年度は、昨年度の調査で終わらなかったプランゲ文庫資料の継続調査とその結果をまとめることに主眼を置くことになる。また、占領期に続く、労働組合およびその文化運動が活況を呈する50年代のサークル詩誌に関する論稿の発表と、旧銀行労働研究所(現金融・労働研究ネットワーク)が、占領末期の1951年から2000年代まで刊行していた機関誌「ひろば」の復刻(不二出版)が決定し、本研究の成果もこの作業に反映されることとなる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2016年度の主要な支出は、旅費とシンポジウム開催時に作成したパンフレット印刷費である。後者についてはほぼ予定どおりの使用額となったが、前者については、ドル相場の変動により、予定よりも低額で航空券を入手できたことから、次年度使用額が生じることになった。
|
次年度使用額の使用計画 |
最終年度の本年度は、余裕を以てプランゲ文庫での調査時間を確保したいと考えおり、旅費に計上する見込みとなっている。
|