最終年度は、これまで調査・収集してきた西南戦争関連の錦絵(以下、西南戦争錦絵)を整理し、研究の成果を社会に還元するための研究活動を行った。具体的には、(1)「西南戦争錦絵データベースの開設」及び(2)「一般向け書籍の刊行」の二つである。 (1)「西南戦争錦絵データベースの開設」に関しては、旧データベース(2014年開設)を一新する必要に迫られ、新たなデータベース(ikizumi-labo.com)を立ち上げた。このデータベースには、これまでの調査・収集で確認できた計913点の西南戦争錦絵の目録を掲載し、さらに掲載許可の得られた計237点を画像付きで掲載している。この数だけでも、国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている西南戦争錦絵の数を優に上回り、この方面の研究の進展に今後大きく寄与するものになるだろうと思う。 また(2)「一般向け書籍の刊行」については、新型コロナウイルスの影響もあり、2020年秋頃の刊行予定に繰り下がった。現在、校正作業中である。既刊の図録はいずれも描かれた絵を紹介するものがほとんどであったが、本書は錦絵と新聞の関係性や、錦絵と浮世絵師及び戯作者との関連にも着目して解説するところに新味がある。西南戦争錦絵を単に「芸術作品」と捉えるのではなく、本来の姿であった戦争報道媒体としての側面、さらに当時活躍の場をほとんど失っていた戯作者の復活の場としての側面を浮かび上がらせることに努めた本書は、位置づけとしては一般向け書籍ながら、最新の研究の成果を踏まえた内容となっている。
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