研究課題/領域番号 |
15K16697
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
CARDI LUCIANA 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 講師 (00725632)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 比較文学 / 日本民話 / 20世紀アメリカ文学 / 狐憑き / ジャポニズム / 黄禍論 / アジア系アメリカ人のアイデンティティ問題 / ジェンダー構築 |
研究実績の概要 |
本年度は、20世紀前半のアメリカ文学と映画における日本民話の受容および、狐の嫁入りや狐が女に化ける民話のモチーフを取り上げたアメリカ人作家に関わる資料を収集し、研究を進めることができた。ジャポニズム、人類混血に対する偏見、黄禍論、オリエンタリズムに影響された文化的な背景を参照しつつ、収集した資料を分析し、口頭発表の形で研究成果の発表を行った。その実績の概要は以下の点に集約できる。 【1. 資料の収集・整理と検討】東京都の国立国会図書館を訪れ、19世紀末から20世紀初頭に至るまでの日本を舞台とした小説や民話の編集を執筆したアリス・メイベル・ベーコン、ジョン・ルーサー・ロング、メアリー・マクニール・フェノロサ、フランシズ・リトル、スーザン・バラルド、エドワード・グレイなどのアメリカ人作家に関わる資料および学術論文を収集した。 【2. 関連書籍の購入】民話・おとぎ話研究の新たな動向に着目する学術評論、20世紀のアメリカ文学や映画における日本のイメージ・日本民話の受容に関する書籍を購入し、幅広く研究を行った。 【3. 研究成果の発表】岡山大学で開催された国際ワークショップ『Japan in the World and the World in Japan: a Methodological Approach 』とアメリカ合衆国オースティン市で行われた現代言語協会「MLA(Modern Language Association)国際学会」 で研究成果を発表した。現代言語協会の国際学会の際には、本研究の対象となる小説『The Fox Woman』(2000年)を執筆した現代アメリカ文学作家キジ・ジョンソンが私の発表内容を目にして、 連絡をくれた。作者本人と直接、本研究に関わる意見交換をするという貴重な機会を持てたことで、研究課題に関する理解をさらに深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
妊娠に伴う健康上の事情や、大学の担当授業数の増加などにより、当初より計画していた海外出張を延期し、アメリカ議会図書館やジョージ・イーストマン・ハウス国際写真映画博物館での一次資料の調査や複写収集を行うことが叶わなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
【1. 基本的研究体制】前年度に引き続き、アメリカ文学における日本民話の受容に関わる資料の整理、分析を行い、研究成果を発表する。特に、20世紀後半のアメリカ文学を研究対象とし、米国の戦後社会における<モデルマイノリティ>としての日系アメリカ人のイメージと60~70年代のフェミニズム運動の影響を踏まえて、狐に関わる民話の受容を検討していきたい。 【2. 研究成果発表】村井まやこ神奈川大学教授と共に、国際学術会「Re-Orienting the Fairy Tale: Contemporary Fairy-Tale Adaptations across Cultures」(おとぎ話のリオリエンテーション - 文化横断的アダプテーションのいま)を実施する予定である。これは、欧米、アジアをはじめ世界各国の関連分野の専門家が神奈川大学に集い、現代文学におけるおとぎ話と民話のアダプテーションと受容について討議する機会となる。この中で、自らの研究成果を発表し、新たな視点を得るべく関連分野の専門家らと議論を実施、意見交換を通して本研究課題に関する知見と情報を得て、さらに研究を深める推進力にしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
妊娠に伴う健康上の事情や、大学の担当授業数増加により、当初より計画していた海外出張を延期せざるを得なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額を国内外資料調査および、研究成果の口頭発表を目的とした出張、書籍の購入、そして作成中の英語の学術論文のプルーフリーディングに使用する予定である。
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