平成30年度は前年度に引き続き本研究に関する資料の収集と調査を行った。特に、20世紀後半から現在に至るまでの資料に焦点を当てて、Nora Okja Keller、Hiromi Goto、Larissa Lai、Terry Watadaなどのアジア系アメリカ人作家およびアジア系カナダ人作家による東アジアの民話の改作を分析した。また、日本比較文学会の全国大会で行った口頭発表「East-Asian Folktales in Hiromi Goto's and Nora Okja Keller's Fiction」でその研究の成果を公開した。日本の民話を取り扱うアジア系アメリカ人作家の研究に伴い、Angela Carterの作品における日本のおとぎ話の影響に関する研究も進め、6月に英国のイースト・アングリア大学で開催された国際シンポジウム「Angela Carter and Japan」において研究成果に関する口頭発表「The Role of Japanese Folktales in Angela Carter's Literary Production」を行った。その発表に基づいた論文は2020年にイギリスの学術雑誌Contemporary Women's Writingの特集号「Angela Carter and Japan」に寄稿される予定である。 また、イギリスで刊行予定の学術専門書「The Transformed Body in Contemporary Japanese Society and Fiction」 にアメリカ人作家Kij Johnsonによって改作される日本のおとぎ話に関する原稿の執筆を依頼され、それを執筆し終え、提出した。その上、学術専門書「 Re-Orienting the Fairy Tale: Contemporary Fairy-Tale Adaptations across Cultures 」がアメリカの出版社Wayne State University Pressの公式な承認を得て、2020年に出版される予定である。筆者は神奈川大学の教授である村井まや子氏と共にこの学術専門書を編集し、序論を執筆した。本書によって、文化横断的な視点から現代文化におけるおとぎ話と民話のアダプテーションの比較研究を発展させ、国際的なおとぎ話研究に多大な貢献を果たすことを確信している。
|