研究課題/領域番号 |
15K16699
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
辻 秀雄 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (70571892)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヘミングウェイ / 誰がために鐘は鳴る / ニューディール / ヴァナキュラー |
研究実績の概要 |
本研究は、アフリカ系アメリカ人作家・知識人Ralph Ellisonと20世紀を代表するアメリカ人作家Ernest Hemingwayを、スタイル論という支点を軸に交叉させて読み直しを行っていく。エリソンのエッセイ群におけるヘミングウェイ評価の転向と軸を一つにした文学スタイルの概念の変遷をたどりながら、アメリカ文学史における人種越境的なダイナミズムが言語化される現場、瞬間を歴史化しつつ実証的に検証していくことを目的としている。 平成28年度には、27年度のアーカイヴ調査や文献調査に基づく着想から、30年代アメリカ文化を背景にしたエリソンとヘミングウェイの接点を探った。エリソンの未発表短編作品である「広場でのパーティー」とヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』(1940年)のテーマや設定の類似性を出発点に研究を進め、スペインを舞台にしたヘミングウェイの長編が実はアメリカのニューディール期の文化的関心を多分に反映している可能性の検証を行った。(国際ヘミングウェイ学会においてこの報告を行った。)さらには、『誰がために鐘は鳴る』のスペインのゲリラ部隊員たちの描写に、一見したところ全く無関係なアメリカ黒人のヴァナキュラーな特色が見て取れることを検討するにいたった。(日本ヘミングウェイ協会全国大会のシンポジウムにおいてこの報告を行った。) このようにヘミングウェイ作品における人種的な要素の介在について研究を積み重ねた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際ヘミングウェイ学会での発表("What Is American about For Whom the Bell Tolls?: Ralph Ellison, the Cultural Front, and the Vernacular." The XVIIth Biennial International Ernest Hemingway Conference. Dominican University, IL. 21 July 2016)、日本ヘミングウェイ協会全国大会シンポジウムでの発表(「ヘミングウェイのヴァナキュラー・スタイル――『誰がために鐘は鳴る』、人種、WPA」日本ヘミングウェイ協会全国大会第27回シンポジウム「ヘミングウェイの言葉と白人/黒人・異邦人」(2016年11月19日、関西学院大学西宮上ケ原キャンパス))を行った。 以上二つの発表に基づく論文が今年度に学会誌に掲載の予定。
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今後の研究の推進方策 |
研究の方向性としては少しエリソンから離れてきてはいるものの、ヘミングウェイ研究においてほとんど研究されていない点に切り込めているため、現在の着想をつきつめていく予定である。ヘミングウェイとニューディール文化の接点について研究を深めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
他の用務の都合上出張の日程を短縮したため相当の旅費が余った。
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会出席の旅費にあてる予定。
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