ラルフ・エリソンのアーカイヴ調査に着想を得て、アーネスト・ヘミングウェイとエリソンの接点として1930年代に注目して研究を進めた。具体的には、スペインを舞台にしたヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』(1940)が実は1930年代ニューディール期の文化的関心を多分に反映している可能性を探求した。エリソンの未発表短編作品である「広場でのパーティー」とヘミングウェイの同小説がニューディール期の左派文化の中核的メッセージである反リンチにつながる問題意識を共有しているにととまらず、一見したところ全く無関係なアメリカ黒人のヴァナキュラーな特色が『誰がために鐘は鳴る』に見て取れることを検討するにいたった。
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